小説の私 ─空白のメール─

文字数 369文字

今日、私は彼の最新のメールに返信をした。
私の本文は空白のメールだ。

でも、実は、彼が前回返信した本文中に
白いフォントで
「また、会えますか?」
と付け加えたのだ。

私は最後に彼とすれ違ってから1ヶ月以上は経過している。

もう我慢の限界で、とにかくつらかった。

2年も会っていないときはそこまで心に何も起きていなかったのに。

彼は誤りのメールだと思って、きっとごみ箱に入れるだろう。

私は期待と諦めが混ざって無感情のような、気だるい気持ちになっていた。

でも、いつものように私のあらゆる質問に答えてくれる彼なら…?

何分で解けるだろうか。
今は定時5分前だ。

私は自分の気持ちに必死すぎて、彼に「誤送信を装い、削除を促すメール」を送り忘れていた。

そして、それに気付いた後も訂正する気が起きなかった。

私はその後45分待ったが、その日私が帰るまで彼から返事はなかった。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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