ボリュームを少し小さくしてみよう

文字数 1,041文字

 随分昔のこと、とある電気店のオーディオコーナーでスピーカーを選ぼうとして、いろいろ聴いていて、で、結構な音量で聴いていたら、とある、ええと、かなり音に関して造詣の深そうな店員さんが私に近づいてきて、
「ええと、あまり大きな音で聴かないで、ボリュームを絞り気味にした方が、音の詳細が聴けていいですよ。音に厳しい人なんか結構そうしていますよ♪」なんて言われたんですよ。
 それから時が過ぎて、鼓膜張筋という筋肉のことを知って、で、この筋肉はまあ、結果として鼓膜の動きを制限するものなんです。
 どういう場合にこの筋肉が作用するかというと、極めて大きな音に晒されたときです。大音響から耳を守るためにこの筋肉が収縮し、音を小さくするんです。そしてそれは、鼓膜の動きを物理的に制限するわけです。
 つまり、例えばマイクロフォンの振動版を指で押さえ付けて、その動きを制限するみたいな感じです。
 そんなことをすれば音が劣化するって、容易に想像できますよね。あるいは別の例え方をするなら、スピーカーから大きな音を出しつつ、コーンを手で押さえつけて音を小さくする、みたいな。そうすると低音域が少なくなるかも知れないし、ほかの音域だってひずみが増えるんじゃないかな。
 だから音楽を聴くとき「ちょっと物足らないかな」くらいの音量で聴いてみます。するとしばらくすると、そのやや小さめの音に順応したのか、音の小ささが「気にならなく」なってきます。そしてやがて、結構大きな音に感じはじめます。
 実はこの時、その鼓膜張筋が緩んだのかも知れません。鼓膜張筋が緩むとその作用によって音が大きく感じ始め、そして生じた音のひずみも解消します。で、音の細かなニュアンスもより細かに聞こえてくるような感じがします。
 私は自宅のオーディオルームで聴いていますが、防音装置なんて不要なくらいの音量で聴いています。室内楽なんかはもちろんですが、ビートルズでも、そういうやや控えめな音量で聴くと、ジョンやポールの声なんかもよく聴き分けられるんですよね。ジョージやリンゴの声だって。つまり何と言うか、料理でやや薄味だと、素材の味が良くわかる、みたいな。
 その一方、例えばコンサートでミキシングをやっている人たちなんか、鼓膜張筋をギンギンに収縮させつつ音の調節をやっているのかな? だからあんな聞くに堪えない大音響で鳴らしているのかな?そもそも長年大音響に晒されて、難聴(C5 dip=4000Hzを中心にした聴力低下)になっているだろうし…
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