私が実際に構築した「リアルサウンドオーディオ」のスピーカー 1

文字数 1,911文字

 一時期ほどオーディオへの拘りがなくなり、音が出りゃいいやってな感じで、そのころ私は、ホームシアター用の安物のスピーカーを使っていたのです。だけど気まぐれに「もっとちゃんとした音で聴きたいな♪」とか思い始め、それで一本6万円くらいのスピーカーを探していました。
 そして何となくJBLのスピーカーにしようかな♪と安直に考えつつ、販売店の人に相談したら、JBLならスタジオモニターの4306はいかが?と言われるのです。値段の割にいい音しますよ、とのこと。
 それで安直にそれを買ったら、確かにいい音でした。ジャズなんかが得意で、景気のいい音です。それと音が爽やかです。
 で、スタジオモニターって何かっていうと、本当はプロがレコードやCDのマスター(原盤)を録音した際に音のチェックをするのが目的のスピーカーです。だから本当は音楽を楽しむためではなく、どんな音が録れているかを確かめるためのものです。
 で、一般的にそういう風に言われるのですが、実は私は、ちょっとその意味が分からない。だって、音のチェックに使われるようなスピーカーこそ、一番いい音なんじゃないのかな? 音のチェックには使えませんが、音楽を楽しめます、なんて言われても、私にとっては意味不明!
 それはさておき、いずれにしても4306くらいの値段のスピーカーだと、「プロ用」には程遠いわけです。箱には「プロフェッショナル」と誇らしげに書いてありますけど。でも、「モニター」というコンセプトは、安いなりに確かに感じられました。そしてモニターに必要なのは、私が本稿の冒頭から散々言っている「音の解像力」なのです。だって、どんな「音」なのか、確認するわけでしょう?
 そして解像力の高い音なら、個々の楽器の存在感、あたかも目の前で演奏しているかの如き臨場感が出るのでは?
 4306は、そういうものが安いなりに、そこそこ表現出来ていたのです。サックスの音が妙にリアルだったりするのです。だったら4306のコンセプトで発展させれば? つまり得意な部分を残し、いまいちな部分を補えば、もっといい音にならないか?
 それから紆余曲折が始まったのです。

 4306は20センチの2Wayです。20センチの低音用は50Hzから3200Hzまでを担当し、それ以上は大きな四角いラッパのようなスピーカー(ホーントゥウィーター)が担当します。
 だけどこれでは低音用は、前に書いた「3オクターブの法則」を満たしていません。つまり低音用スピーカーを比較的高音域の3200Hzまで使っているわけです。
 ところで、前にも書いたように、長岡鉄男さんはフルレンジスピーカーをこよなく愛しておられたと思います。低音再生の出来る大きなスピーカーで高音域まで再生すると、分割振動により音が歪みます。(高調波歪み)
 だけどこれは使いようによってはスパイスみたいな効果があって、ジャズなんかでは迫力のあるサウンドが得られることが多々あります。しかしその一方、音楽ジャンルを選んでしまうかも知れません。
 ところでJBLのスピーカーはジャズが得意、という定評があります。つまりジャズで迫力のある再生をするために、歪みを上手に使うという考えがあるように、私には思えます。定評のある4312というモデルは、口径30cmという大型スピーカーを、低音用をローパスフィルター無し、つまりフルレンジ駆動しています。そして、そういうのもJBLの個性だと思います。そしてスピーカーの個性は大切だと思います。それが、ユーザーが望む音であるならば。

 だけどここで、私の目指した「リアルサウンドオーディオ」とは何たるかを考えて下さい。つまりこれは音楽ソースの音の情報を「正確に伝える」ということです。だから意図的に「荒々しい音」にして迫力を出すというのは、少なくとも私の目指す音ではありません。
 そもそも荒々しい音なのか、繊細な音なのか。それは音楽制作者の仕事だと思うのです。で、この作業をマスタリングといいます。つまりどんな音にしたいかは、制作者が責任を持って仕上げているはず。だから音楽再生装置は、荒々しくして迫力を出すとかいう「要らぬ事」は、やらない方がいいのではないかと、私は考えたのです。
 とはいうものの、私は4306のノーマルの状態の音は結構好きでした。JBLにしては個性がないとも言われていますが、爽やかで聴きやすい音なのです。
 だからその辺の兼ね合いも考え、つまり4306の個性をなるべく残しつつ、だけどなるべく3オクターブの法則に基づいた、あるいはそれに近い状態にして、歪みの少ない、解像力の高い音を作れないかと考えたのです。

 
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