耳鳴りがもたらす恩恵

文字数 1,429文字

 ドラムスのハイハットなんかのシャ~~~ンというヌケの良い音。実はこれが、歳をとった今も、若い頃と遜色なく聞こえています。しかしYouTubeなんかで低音から高音まで出してくれる動画がありますが、実は若い頃と比べ、聞こえる高音の音域は随分狭くなっています。だけどハイハットが若い頃と遜色なく聴こえるのは何故?
 人間の耳の奥には蝸牛と呼ばれるカタツムリのような形の器官があり、それはチューブのようなものをぐるぐるに、つまり螺旋形に巻いたような形で、そのチューブの内側の壁には、音を感じ取る細胞がずらりと並んでいます。
 それは有毛細胞と言われ、音を感じる細胞で、低音用から高音用まで15,000個程がずらりと並んでいるのです。で、その蝸牛の中はリンパ液という液体で満たされ、それに鼓膜からの音、というか振動が伝わり、その振動が有毛細胞を刺激して、するとその細胞が反応し、これは神経の興奮といいますが、興奮した細胞は電気信号を発します。
 で、その信号はそれに接続された聴神経を伝わり、脳へと情報が送られ、最終的には大脳皮質に伝わり、「音」あるいは「音楽」として認識される訳です。
 ところが歳を取ると蝸牛にずらりと並んだ有毛細胞のうち、高い音に反応するものから順に劣化、というか、ぶっちゃけ壊れていくのです。
 何故に高音用から先に劣化する、っていうか壊れるかというと、高音用が蝸牛の手前にあるからです。で、低音用は奥にあります。だから手前にある高音用は、常時いろんな周波数の音に晒され、早くに劣化するのです。でもまあこのメカニズムはこのへんにします。
 で、壊れるとどうやら「聴こえなくなる」ではなくて「聴こえっぱなしになる」みたいです。
 つまり脳では壊れた有毛細胞からの信号が「常時聴こえている」みたいになるようです。これが高音域の「キ~~ン」という耳鳴りです。
 ところで耳鳴りのメカニズムは耳鼻科の先生がいろいろ書いておられますが、大抵は有毛細胞が壊れて耳鳴りになるんだって書いてあります。でも実際は良く分かっていないのかな?
 ともあれ壊れた有毛細胞はキ~~ンという音を「出しっぱなし」になっているのではないかと、私は踏んでいます。だって壊れて音が出なくなったらその周波数の音が欠落するでしょう?
 つまりトゥイーターの壊れたスピーカーシステムみたいな音に、あるいはアッテネータで絞ったみたいな音になるはずでしょう?
 で、有毛細胞は高い音から順に壊れるのであれば、例えば10,000Hzから上がみんな壊れた状態みたくなっているわけで、それで音を「出しっぱなし」なら、常時10,000Hzより上の周波数からなるホワイトノイズが鳴っているわけで、それがあの「キ~~ン」という耳鳴りなら、イメージが合いますよね。
 ここまでの話、よろしいかな?
 で、ハイハットの「シャ~~~ン!」なんだけど、先程の10,000Hz以上の有毛細胞が壊れた人にとっては、ハイハットの音は10,000Hz以下の実際に聴こえる音と、10,000以上のホワイトノイズが同時に聴こえている訳です。
 聴こえるというか、そういう信号が脳に伝わっている訳です。で、脳はこれらの情報をうまい具合に調整、というか取捨選択し、合成し、で、若い頃に聴いたハイハットの音の記憶に照らし合わせ、そういう訳で若い頃に聴いたハイハットの音に「遜色のない」音に仕立て上げているのではないかと、私は考えているのです。知らんけど。
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