第28話 哀れな世界
文字数 691文字
古橋みたいな腕のいい奴はそうはいない。その古橋をナイフで殺せる殺し屋は数えるほどだ。この業界は狭い。古橋を殺したとなれば噂はすぐに広まる。
自分の命を懸けてでも名声が欲しい奴らは星の数ほど虫のように湧いて出てくる。
そして次はその殺し屋が狙われる。哀れな世界だ。
航は作戦指令室にやって来た。
「なぜ涼一や美咲ちゃんがここにいるんだ?」
椅子に腰かけた制服を着ている二人を見つめ航はため息をついた。
「鶴さんから集合がかかったんだよ。なあ、美咲」
「そうよ。次の作戦を考えなくっちゃ」
鶴は何も知らないよと言わんばかりの顔をしながら腕を組み早送りしたモニターを見ていた。
「何もかも知っているということか」
「それはもう」
美咲がオレンジジュースをごくりと飲み答えた。
「もう深入りするな。犯罪に巻き込まれるぞ。裏の世界を知ってしまえば平穏な表の世界には帰れない。殺すか殺されるかの......もう俺たちは死を覚悟して......いや、すでに死んでいるのかも知れないが」
「航、難しいことは言うな!カエルの子はカエル。血は争えない。桃子だって...い、いや」
鶴は言いかけて言葉を飲み込んだ。
航の妻の桃子の過去が一瞬、頭の中を駆け巡ったが首をふり消し去った。
「母さんが何か?」
涼一が顔をしかめ鶴に詰め寄った。
「いや、お前の母さんも悪い男に捕まったなと。なあ、航」
「どういうこと?」
涼一は不思議がった。
「美咲も涼一と仲良くっていいな」
鶴は不自然なほど話を逸らした。
「そうだろ。今、付き合っているんだ。なあ、美咲」
涼一が美咲に同意を求めた。
「付き合ってないし」
冷たい答えが返ってきた。
自分の命を懸けてでも名声が欲しい奴らは星の数ほど虫のように湧いて出てくる。
そして次はその殺し屋が狙われる。哀れな世界だ。
航は作戦指令室にやって来た。
「なぜ涼一や美咲ちゃんがここにいるんだ?」
椅子に腰かけた制服を着ている二人を見つめ航はため息をついた。
「鶴さんから集合がかかったんだよ。なあ、美咲」
「そうよ。次の作戦を考えなくっちゃ」
鶴は何も知らないよと言わんばかりの顔をしながら腕を組み早送りしたモニターを見ていた。
「何もかも知っているということか」
「それはもう」
美咲がオレンジジュースをごくりと飲み答えた。
「もう深入りするな。犯罪に巻き込まれるぞ。裏の世界を知ってしまえば平穏な表の世界には帰れない。殺すか殺されるかの......もう俺たちは死を覚悟して......いや、すでに死んでいるのかも知れないが」
「航、難しいことは言うな!カエルの子はカエル。血は争えない。桃子だって...い、いや」
鶴は言いかけて言葉を飲み込んだ。
航の妻の桃子の過去が一瞬、頭の中を駆け巡ったが首をふり消し去った。
「母さんが何か?」
涼一が顔をしかめ鶴に詰め寄った。
「いや、お前の母さんも悪い男に捕まったなと。なあ、航」
「どういうこと?」
涼一は不思議がった。
「美咲も涼一と仲良くっていいな」
鶴は不自然なほど話を逸らした。
「そうだろ。今、付き合っているんだ。なあ、美咲」
涼一が美咲に同意を求めた。
「付き合ってないし」
冷たい答えが返ってきた。