第19話 母と

文字数 474文字

 僕はやっとのことで家にたどり着いた。
 数十メートルの距離を果てしなく彷徨っていたようだ。

「だだいま。あれ?親父は?」
「出て行ったわよ。浩一と飲みに行くと言って」
 母さんが僕に答えた。
「珍しい。でも、それってマズくないの?殺し屋と警察官が同じテーブルで楽しく酒を酌み交わすのって」
 僕の面白くもない冗談もこれが精一杯だ。
「浩一は父さんのことは何も知らない......と思うけど」
「あいまいだな」
 僕は溜息まじりに答えた。
「それで涼一は父さんとちゃんと話したの?」
「色々とね。僕は今まで通り関わらない事にした」
「出来るの?」
「やってみる」
「血が騒いでくるわよ」
 母さんは小悪魔的な笑顔を作り僕の肩をつついた。
「殺し屋の?まさか」
 そんな職業があってたまるか。
 しかし、母さんは何があっても全く動じないのが不思議だ。母さんの事だから、きっとまだ何か隠しているに違いない。
「父さんが気になっているんじゃない?常に命が危ういから。涼一も気をつけないといけないわよ」
「そうだね」
「念の為に銃はいる?」
「いらね」
「予備ならたくさんあるのに」
「あったらダメだろ」





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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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