第13話 鶴の元へ
文字数 942文字
「来ると思ってたよ」
鶴さんのトーンの低い静かな第一声だった。きっと僕を待ち構えていたに違いない。鶴さんの事を知らない人がその声を聞いたらその威圧感に圧倒されるだろう。
合鍵を作製中であるとはいうもののいつもの冷静な口調だ。
鍵屋の<鶴>は母が働くスーパーマーケット井田の横に店を構えているので僕は幼い頃からよく遊びに来ていた。
「......龍兄は本当に死んだのかな」
僕は信じられない気持ちだ。救急で搬送されてから病院ですぐに亡くなったと聞いた。
「あっけなく死んだな。でも、直斗君は冷静だったよ」
鶴さんだって冷静だ。
「それは救いだね」
スーパーマーケット井田から心配そうに母がこちらの様子を伺っているのが分かる。
「鶴さん、教えてほしいんだ」
「何を」
「親父と龍兄のこと」
「どんな事だい?」
「殺された理由。親父も狙われているって龍兄が......」
フラッシュバックのようにあの出来事が蘇る。あふれ出る黒っぽく赤い血。僕はまだ学校にも行けず眠れない日々が続いていた。
「龍は何か言っていたか?何か見たか?」
奥にある冷蔵庫の扉を開けオレンジジュースを取り出し僕に渡した。
「鶴さんのところに行けと。それと犯人を見た」
オレンジジュースを口に含んで答えた。
その時、一瞬、鶴さんの肩がビクッと動いた気がした。
「警察に話したか?」
「いや、話してない。話すべきだったかもしれないけど話しちゃいけない気がして」
「そうだな。良い判断だ。浩一にも内緒だ。奴は警察官だからな。それで犯人の特徴は?」
鶴さんの目が恐ろしく光った気がした。
「グレーのパーカーで細身。若い男。右手の甲にタトゥーがあった」
「蛇か?」
「そう」
「そうか。やはりそうか」
鶴さんは何か考えている。誰が龍兄を殺したか知っているのだ。
「実はな、その日、龍は航とそこで待ち合わせていたんだ。それで狙われたんだ」
「なぜ狙われんだよ」
「情報が洩れてる」
鶴さんは意を決したように店の奥へと歩き出した。
僕にちょっとこっちへ来てくれと言って鶴さんが扉を開けるともう一つステンレスでできた厚みのある扉があり鶴さんは指紋認証をして中へ入った。
僕は後を追いかけ、その部屋を見て一瞬、声も出ず唖然とした。
「何なんだ?この部屋は?」
鶴さんのトーンの低い静かな第一声だった。きっと僕を待ち構えていたに違いない。鶴さんの事を知らない人がその声を聞いたらその威圧感に圧倒されるだろう。
合鍵を作製中であるとはいうもののいつもの冷静な口調だ。
鍵屋の<鶴>は母が働くスーパーマーケット井田の横に店を構えているので僕は幼い頃からよく遊びに来ていた。
「......龍兄は本当に死んだのかな」
僕は信じられない気持ちだ。救急で搬送されてから病院ですぐに亡くなったと聞いた。
「あっけなく死んだな。でも、直斗君は冷静だったよ」
鶴さんだって冷静だ。
「それは救いだね」
スーパーマーケット井田から心配そうに母がこちらの様子を伺っているのが分かる。
「鶴さん、教えてほしいんだ」
「何を」
「親父と龍兄のこと」
「どんな事だい?」
「殺された理由。親父も狙われているって龍兄が......」
フラッシュバックのようにあの出来事が蘇る。あふれ出る黒っぽく赤い血。僕はまだ学校にも行けず眠れない日々が続いていた。
「龍は何か言っていたか?何か見たか?」
奥にある冷蔵庫の扉を開けオレンジジュースを取り出し僕に渡した。
「鶴さんのところに行けと。それと犯人を見た」
オレンジジュースを口に含んで答えた。
その時、一瞬、鶴さんの肩がビクッと動いた気がした。
「警察に話したか?」
「いや、話してない。話すべきだったかもしれないけど話しちゃいけない気がして」
「そうだな。良い判断だ。浩一にも内緒だ。奴は警察官だからな。それで犯人の特徴は?」
鶴さんの目が恐ろしく光った気がした。
「グレーのパーカーで細身。若い男。右手の甲にタトゥーがあった」
「蛇か?」
「そう」
「そうか。やはりそうか」
鶴さんは何か考えている。誰が龍兄を殺したか知っているのだ。
「実はな、その日、龍は航とそこで待ち合わせていたんだ。それで狙われたんだ」
「なぜ狙われんだよ」
「情報が洩れてる」
鶴さんは意を決したように店の奥へと歩き出した。
僕にちょっとこっちへ来てくれと言って鶴さんが扉を開けるともう一つステンレスでできた厚みのある扉があり鶴さんは指紋認証をして中へ入った。
僕は後を追いかけ、その部屋を見て一瞬、声も出ず唖然とした。
「何なんだ?この部屋は?」