第2話 合鍵屋<鶴>
文字数 1,084文字
「鶴 さん、何か良い仕事が来てますか?」
龍はスーパーマーケット井田の横に店を構えている合鍵屋<鶴>に顔を出した。
「いや、今は依頼がないなぁ。どこも不景気だよな」
「え~この仕事は景気に左右されますかねぇ?」
龍が皮肉ぎみに鶴に言った。
<鶴>のオーナーは下沢鶴男 。優しそうな顔立ちに似合わず肝は据わっている。引退はしたが以前は暴力団の組長をしていた。今では小さな店で合鍵を製作したり、自転車の修理をしたりカバン、靴の補修までしている。裏稼業では組事務所やSIDそれに訳アリの奴らから殺しの依頼まで来る。時には警察本部長や警察庁長官から内密での暗殺依頼もある。
「龍、それはそうと航が狙われているみたいだな」
「えっ。どこのどいつに?」
「知らないのか?噂になっているぞ。務所から出てきた奴らしい。たしか、ごろつきの若造だ。そう、足立進 って言ってたかな」
自転車のパンク穴をふさぎながら答えた。
「足立進ねぇ」
「どんな奴だ?」
「あの悪党、薬をさばいている奴です。たしか航が以前に殺し損ねたやつだな。なんば界隈を仕切っているヤクザの下っ端の<スネーク>ってグループのリーダーですよ」
「ああ。思い出した。本田組の悪ガキか。以前に依頼があった標的のあいつか。ああ、それは厄介だな。あいつは頭がいかれている」
「俺が航に無理やり頼んだのが悪かったんです......航は腕が良いのにあの時はどうしたんだろう。俺がやっときゃよかったです.......」
「そうだったな」
田中龍がほかの殺しの仕事があったので航にこの仕事を頼んだのだ。
航は足を洗ったのに龍の頼みならと仕方なく受けてくれた。
仕事から遠ざかっていたから腕が錆び付いたのかと龍たちは思ったが航に限ってそれはない。この仕事をやるうえで少しの迷いも死を意味することは航も知っている。プロとはそういうものだ。
龍は奥にある小さな冷蔵庫を開けビール缶を取り出し飲みだした。
「おいおい、まだ昼間だぞ」
「鶴さん。俺、ビールを飲まないと死ぬんですよ」
「あほか!航のように働け!」
「でも、航が心配になってきたな。行方知れずだし。桃子 にも聞いてみますか」
飲み干したビール缶を握りつぶし、また冷蔵庫の扉を開けた。
「ほどほどにしとけよ」
「鶴さん、やっぱ、ここは居心地がいいよ。なんだか安心します」
「そうか」
そう言った後、田中龍は一気にビールを飲み干した。
「守るべきものが出来るとこの仕事は難しいのかなぁ」
龍は呟きながら奥の扉を開けて中に入って行った。
「プロフェッショナルとは.......」
鶴が話を始めたが龍がいなくなったのでやめることにした。
龍はスーパーマーケット井田の横に店を構えている合鍵屋<鶴>に顔を出した。
「いや、今は依頼がないなぁ。どこも不景気だよな」
「え~この仕事は景気に左右されますかねぇ?」
龍が皮肉ぎみに鶴に言った。
<鶴>のオーナーは
「龍、それはそうと航が狙われているみたいだな」
「えっ。どこのどいつに?」
「知らないのか?噂になっているぞ。務所から出てきた奴らしい。たしか、ごろつきの若造だ。そう、
自転車のパンク穴をふさぎながら答えた。
「足立進ねぇ」
「どんな奴だ?」
「あの悪党、薬をさばいている奴です。たしか航が以前に殺し損ねたやつだな。なんば界隈を仕切っているヤクザの下っ端の<スネーク>ってグループのリーダーですよ」
「ああ。思い出した。本田組の悪ガキか。以前に依頼があった標的のあいつか。ああ、それは厄介だな。あいつは頭がいかれている」
「俺が航に無理やり頼んだのが悪かったんです......航は腕が良いのにあの時はどうしたんだろう。俺がやっときゃよかったです.......」
「そうだったな」
田中龍がほかの殺しの仕事があったので航にこの仕事を頼んだのだ。
航は足を洗ったのに龍の頼みならと仕方なく受けてくれた。
仕事から遠ざかっていたから腕が錆び付いたのかと龍たちは思ったが航に限ってそれはない。この仕事をやるうえで少しの迷いも死を意味することは航も知っている。プロとはそういうものだ。
龍は奥にある小さな冷蔵庫を開けビール缶を取り出し飲みだした。
「おいおい、まだ昼間だぞ」
「鶴さん。俺、ビールを飲まないと死ぬんですよ」
「あほか!航のように働け!」
「でも、航が心配になってきたな。行方知れずだし。
飲み干したビール缶を握りつぶし、また冷蔵庫の扉を開けた。
「ほどほどにしとけよ」
「鶴さん、やっぱ、ここは居心地がいいよ。なんだか安心します」
「そうか」
そう言った後、田中龍は一気にビールを飲み干した。
「守るべきものが出来るとこの仕事は難しいのかなぁ」
龍は呟きながら奥の扉を開けて中に入って行った。
「プロフェッショナルとは.......」
鶴が話を始めたが龍がいなくなったのでやめることにした。