第3話 パスワード

文字数 799文字

 一週間たっても親父からの連絡はない。母さんは気にも留めていない。
 「いつもの事よ。それが仕事」そう言うだけだ。夫婦とはそういうものか。いや、そんなはずはない。

「親父いる?」
 僕は親父の部屋の扉を開けた。
「いるはずもないか」
 そうつぶやきながら部屋を見渡した。いつも思う事だが殺風景な狭い部屋だ。
 壁に貼ってある家族写真以外に何もない。親父は趣味ってものがないのかと昔から心配していた。
 僕はふと机の上にあるパソコンの電源が入っていることに気が付いた。
「電源入れっぱなしじゃないか」
 キーボードを叩いてみる。
 パスワードねぇ。
 何から何までパスワードを聞いてくるモニターに人々はイライラしないものなのか知りたい衝動に駆られる。パスワードを覚えるだけで脳がパンクしそうだ。
 <ryoichi>
 打ち込むと画面が変わった。
 何故開く......そうか、僕の名前なんだね。すこし微笑んでしまった自分に気が付いた。セキュリティー万歳!
 親父......簡単にパスワードを解かれたら意味がないだろ。
 半笑いを浮かべながら画面を見つめた。
 親父の居場所のヒントを探し出そうと更にキーボードを叩く。
 見つけたあるファイルには家族の写真が大量にきれいに日付ごとに保管されている。
 まめだなぁ
 眺めながら懐かしい思い出にふけってしまった。幸せそうな家族の写真。スキー旅行、入学式、卒業式、運動会、サッカーの試合、僕の横におやじはいつもいたよなぁ。
 
 その横に怪しいファイルを見つけた。
 題名「another face」......もう一つの顔?
 何?
 
 クリックするとパスワードを聞いてきた。
「またかよ。何度聞くんだよ。はいはい。今度は母さんの名前だったりして」
 <momoko>
 <ピッ>
 画面が変わった。
 開くのかよ。
 呆れた僕はモニターにひとり突っ込みを入れた。

 そしてとんでもないものを目にすることになった。








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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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