第12話 龍兄…
文字数 634文字
僕は龍兄のあふれ出る血をどうすることもできずにただ両手で押さえるだけだった。
周りに人だかりができたが誰もが傍観するだけで現実とは思えないでいる様だ。
「す、す、すまん。り、涼一、話を聞いてやれなくて......な、何が知りたい?うぇ、や、やられた。ほ、本田組......わ、航も......狙われて......い」
「どうなってるんだよ!龍兄!大丈夫だよ!死なないで!」
「うぇ、か、鍵......屋......あ、あとは頼む。俺はもう......」
そう言い残し龍兄は吐血した。
「たつにぃー!!龍......にい」
僕は気が遠くなり吐き気がして道端で泣きながら吐いた。
血で染まる両手をむなしくずっと見つめていた。
遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
人だかりをかぎ分けて救急救命士が到着しストレッチャーが降ろされ龍兄は運ばれていった。
僕はあわただしく働く彼らの蘇生措置を遠くからぼんやりと見ていた。
◇◇◇
死んだ。
人って簡単に死ぬんだ。
時が来れば簡単なものだ。
死ぬんだ。
大きく息を吸い込みゆっくりと吐き出す。
神様なんていない。
そう、僕は神様に今までたくさんのお願いをしてきたから、きっと最後のお願いまで使い果たしたのだろう。
親父はまだ帰って来ない。親父、こんな時に何しているんだ。
鍵屋<鶴>へ行こう。
鶴さんに会おう。
死にゆく人は残された人に望みを託すものだ。いや違う。残された人は死した人の望みを叶えるものだ。
いつも親父はそう言っていた。
周りに人だかりができたが誰もが傍観するだけで現実とは思えないでいる様だ。
「す、す、すまん。り、涼一、話を聞いてやれなくて......な、何が知りたい?うぇ、や、やられた。ほ、本田組......わ、航も......狙われて......い」
「どうなってるんだよ!龍兄!大丈夫だよ!死なないで!」
「うぇ、か、鍵......屋......あ、あとは頼む。俺はもう......」
そう言い残し龍兄は吐血した。
「たつにぃー!!龍......にい」
僕は気が遠くなり吐き気がして道端で泣きながら吐いた。
血で染まる両手をむなしくずっと見つめていた。
遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
人だかりをかぎ分けて救急救命士が到着しストレッチャーが降ろされ龍兄は運ばれていった。
僕はあわただしく働く彼らの蘇生措置を遠くからぼんやりと見ていた。
◇◇◇
死んだ。
人って簡単に死ぬんだ。
時が来れば簡単なものだ。
死ぬんだ。
大きく息を吸い込みゆっくりと吐き出す。
神様なんていない。
そう、僕は神様に今までたくさんのお願いをしてきたから、きっと最後のお願いまで使い果たしたのだろう。
親父はまだ帰って来ない。親父、こんな時に何しているんだ。
鍵屋<鶴>へ行こう。
鶴さんに会おう。
死にゆく人は残された人に望みを託すものだ。いや違う。残された人は死した人の望みを叶えるものだ。
いつも親父はそう言っていた。