第30話 気のせい
文字数 879文字
何か怪しい......
乱れた空気を感じる。いや、匂いと言ってもいい。
航は自分の感覚をいつも信じている。殺し屋が生き残るためには感覚を研ぎ澄まさなければいつか簡単に殺されることを知っている。そんな奴らをたくさん見てきた。
いつもと違う世界に迷い込んだこの感じ。
何かおかしい。
足立に嵌められたかもしれない。
直感だ。
航は中央環状線の交差点を東に山に向かって左折した足立の車とは反対方向に右折し市内へと車を走らせた。
気のせいかもしれないが心配するに越したことはない。
今日のところは引き上げるのが賢明だ。
しばらくするとバックミラーを見ると猛然と突進してくるグレーの車が見えた。
(うそだろ!やばい!)
<ドン>
鈍い音と共に車が揺れ航の額がハンドルにぶつけそうになった。
(くそったれ!)
逃げ切ろうと急ハンドルを切るが追いかけて来る。
<パンパンパンパン>
銃撃だ。
「おいおいおい、銃かよ。こんな町のど真ん中で撃ってくるとはいい度胸だ」
焦り声が車中に響く。
アクセルを踏み込み三車線の道路を左右に車をよけながらスピードを上げた。
<パンパンパン>
窓から手を伸ばし銃で航の車を狙ってくる。
車同士のぶつかる音が響いた。
航がダッシュボードの中の銃を取ろうと助手席に体を向けた時、縁石に乗り上げて車が宙を舞った。
「くそーうおぁー」
<ガシャーンドカドカドドーンガシャ>
車が横転し中央分離帯の芝生の上で止まった。車が白煙に包まれた。
航は腕から血を流しているが何とかドアを足で蹴って開けた。外に出て逃げようと力を入れるが思うように体が上手く動かない。銃も見当たらない。腕を押さえ何とか立ち上がると航に銃を向けた男がいた。
「西山航か?」
男が聞いた。おそらく足立の仲間だろう。
「だったら何だっていうんだ?」
銃口が航を捉えている。
死ぬときはこんなものかとあっさり覚悟を決める時が来たのか。
男がトリガーに指をかけた。
何か手はないのか......
最後は家族のことを思い出すのは本当だと航は初めて知った。
「すまんな」
<パン>
倒れた。
乱れた空気を感じる。いや、匂いと言ってもいい。
航は自分の感覚をいつも信じている。殺し屋が生き残るためには感覚を研ぎ澄まさなければいつか簡単に殺されることを知っている。そんな奴らをたくさん見てきた。
いつもと違う世界に迷い込んだこの感じ。
何かおかしい。
足立に嵌められたかもしれない。
直感だ。
航は中央環状線の交差点を東に山に向かって左折した足立の車とは反対方向に右折し市内へと車を走らせた。
気のせいかもしれないが心配するに越したことはない。
今日のところは引き上げるのが賢明だ。
しばらくするとバックミラーを見ると猛然と突進してくるグレーの車が見えた。
(うそだろ!やばい!)
<ドン>
鈍い音と共に車が揺れ航の額がハンドルにぶつけそうになった。
(くそったれ!)
逃げ切ろうと急ハンドルを切るが追いかけて来る。
<パンパンパンパン>
銃撃だ。
「おいおいおい、銃かよ。こんな町のど真ん中で撃ってくるとはいい度胸だ」
焦り声が車中に響く。
アクセルを踏み込み三車線の道路を左右に車をよけながらスピードを上げた。
<パンパンパン>
窓から手を伸ばし銃で航の車を狙ってくる。
車同士のぶつかる音が響いた。
航がダッシュボードの中の銃を取ろうと助手席に体を向けた時、縁石に乗り上げて車が宙を舞った。
「くそーうおぁー」
<ガシャーンドカドカドドーンガシャ>
車が横転し中央分離帯の芝生の上で止まった。車が白煙に包まれた。
航は腕から血を流しているが何とかドアを足で蹴って開けた。外に出て逃げようと力を入れるが思うように体が上手く動かない。銃も見当たらない。腕を押さえ何とか立ち上がると航に銃を向けた男がいた。
「西山航か?」
男が聞いた。おそらく足立の仲間だろう。
「だったら何だっていうんだ?」
銃口が航を捉えている。
死ぬときはこんなものかとあっさり覚悟を決める時が来たのか。
男がトリガーに指をかけた。
何か手はないのか......
最後は家族のことを思い出すのは本当だと航は初めて知った。
「すまんな」
<パン>
倒れた。