第32話 中学二年生の夏/航と龍
文字数 987文字
あれは航と龍が中学二年生の夏だった。
あの日はとても暑くて蝉の鳴き声もあまり聞こえないほどだった。
「龍、何する?今日も施設抜け出して町に出てゲーセンでも行くか?」
ベッドに寝転がっている龍を誘った。
親兄弟のいない二人は幼いころから同じ養護施設で暮らしていて学校が休みの日は退屈していた。
「いや、今夜やることがある」
「何をやるんだよ」
「大森を叩きのめす」
「やめとけ、奴はチンピラだぜ。俺ら中坊が相手に出来ない連中さ」
「ああ、わかってるけど泉水ちゃんがやられた……」
「え、泉水ちゃんが」
「希美も沙知も」
「龍、どういう事なんだ。みんな大丈夫なのか?」
「健の話だと、奴は女の子を獲物にしてもてあそんでる。もう、彼女らはヤク中で何も話せない状態らしい。どこに連れて行かれたかもわからないらしい」
「くそ!いかれてやがる」
冷静さを失った航は愛用のナイフを手に取り見つめた。
「やるか」
「ああ」
◇◇◇
「おい、航、ここはどこなんだ?」
龍は目を覚ますなり航に尋ねた。
「わからない。誰かに連れてこられたみたいだ」
二人は自動車修理工場の倉庫の中の事務所にいた。
「なあ、大森は死んだかな」
「たぶん、龍がバットで殴った後、俺が胸を刺したから死んだはずだ」
「航は大丈夫か?俺は痛えよ、足をやられた。折れたかな」
「おお、二人とも目が覚めたか」
ひとりの男が部屋に入ってきた。
「あんた誰?」
「俺か。俺は下沢組の鶴だ。まあ、ヤクザだな。ほぼ引退しているが」
「他の連中をやっつけて俺たちを助けてくれたのか?」
「そういう事だな。奴らはお前ら子供が相手できるタマじゃねえな。でもよくやったな。お前ら度胸もあるし腕もいいみたいだな」
「死んだのか?」
「そう、もうお前たちは殺人犯」
「俺らこれからどうすればいい?」
龍は急に焦りだした。
「そうだな、警察に行って自供するか、それとも俺のところにくるか......面倒をみてやるよ」
たまたま鶴がその抗争現場を通りかかっただけではあったが、状況を見ている間にいつの間にか助けることとなった。
「殺人犯か......」
すでに鶴は手を回しいつものように掃除屋に死体を始末させていた。
警察庁長官は鶴からの連絡を受け何もなかったように闇に葬った。
「悪党を始末したいか?」
「腹一杯、飯も食べたい」
「そうか」
二人は鶴の元で一流の殺し屋の道を歩き始めた。
中学二年生の夏だ。
あの日はとても暑くて蝉の鳴き声もあまり聞こえないほどだった。
「龍、何する?今日も施設抜け出して町に出てゲーセンでも行くか?」
ベッドに寝転がっている龍を誘った。
親兄弟のいない二人は幼いころから同じ養護施設で暮らしていて学校が休みの日は退屈していた。
「いや、今夜やることがある」
「何をやるんだよ」
「大森を叩きのめす」
「やめとけ、奴はチンピラだぜ。俺ら中坊が相手に出来ない連中さ」
「ああ、わかってるけど泉水ちゃんがやられた……」
「え、泉水ちゃんが」
「希美も沙知も」
「龍、どういう事なんだ。みんな大丈夫なのか?」
「健の話だと、奴は女の子を獲物にしてもてあそんでる。もう、彼女らはヤク中で何も話せない状態らしい。どこに連れて行かれたかもわからないらしい」
「くそ!いかれてやがる」
冷静さを失った航は愛用のナイフを手に取り見つめた。
「やるか」
「ああ」
◇◇◇
「おい、航、ここはどこなんだ?」
龍は目を覚ますなり航に尋ねた。
「わからない。誰かに連れてこられたみたいだ」
二人は自動車修理工場の倉庫の中の事務所にいた。
「なあ、大森は死んだかな」
「たぶん、龍がバットで殴った後、俺が胸を刺したから死んだはずだ」
「航は大丈夫か?俺は痛えよ、足をやられた。折れたかな」
「おお、二人とも目が覚めたか」
ひとりの男が部屋に入ってきた。
「あんた誰?」
「俺か。俺は下沢組の鶴だ。まあ、ヤクザだな。ほぼ引退しているが」
「他の連中をやっつけて俺たちを助けてくれたのか?」
「そういう事だな。奴らはお前ら子供が相手できるタマじゃねえな。でもよくやったな。お前ら度胸もあるし腕もいいみたいだな」
「死んだのか?」
「そう、もうお前たちは殺人犯」
「俺らこれからどうすればいい?」
龍は急に焦りだした。
「そうだな、警察に行って自供するか、それとも俺のところにくるか......面倒をみてやるよ」
たまたま鶴がその抗争現場を通りかかっただけではあったが、状況を見ている間にいつの間にか助けることとなった。
「殺人犯か......」
すでに鶴は手を回しいつものように掃除屋に死体を始末させていた。
警察庁長官は鶴からの連絡を受け何もなかったように闇に葬った。
「悪党を始末したいか?」
「腹一杯、飯も食べたい」
「そうか」
二人は鶴の元で一流の殺し屋の道を歩き始めた。
中学二年生の夏だ。