第31話 死んだ

文字数 498文字

 死んだ。

 見ればわかる。
 
 倒れた男の後頭部を撃った向こう側に銃を構えている奴が立っていた。

 龍だ。

「大丈夫か?航」
「ああ、大丈夫だ。お前が死ぬはずはないと思ってたよ」
 航が龍に言った。
「だろ。急ごう。奴らが追いかけてくる」
 龍は航の腕を担いで車に乗り込んだ。

 もう一人の敵は倒れた男のそばで追いかけてくることなく呆然と立ち尽くしていた。

「まだ、こんな車に乗っているのかよ」
「これが好きなんだよ」

 航はいつものようにフォルクスワーゲン ビートルをバカにした。

「よく生きていたな。味方さえ欺いて」
「ああ。あの時は息子に助けられたよ。息子から連絡が来て狙われていることを悟った」
 龍は息子の直斗に感謝していた。
「そうだったのか。さすが直斗君だな。それで今まで身を隠していたのか?」
「おう。フェンタニルの倉庫も突き止めたし、俺も復讐を計画していたところに航が現れた」
「そうか。でも助かったよ。お前はこのまま死んだことにしとけよ」
「掟か......そうだな」
 腕を押さえてはいたが航は気を失いかけていた。
「航、あの時.........」
 龍は眠ってしまった航を見つめていた。
「そうだな。ゆっくり眠れよ」




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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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