第29話 小島

文字数 766文字

 航は本田組事務所を張り込んでいた。

 足立が事務所から出てきたら尾行する予定だ。 
 彼らは供給元を断たれたとはいえ、必ずフェンタニルをストックしている場所があるはずだ。
 そこに足立進は必ず行く。そこで一網打尽に奴らを始末する。
 航は密かにひとり計画していた。

 事務所向かい側の空き部屋はすでに使えないので、航は大通りを挟んだ反対側の駐車場に車を止め双眼鏡で事務所周辺を監視していた。
 入口は見えないが、人が出てきたら見える位置だ。
 古橋を殺害した奴らは航自身も狙っているのは間違いない。細心の注意を払っていた。

 しかし、いつまでたっても動く気配がない。

 事務所ごと潰すことも考えたが、それではフェンタニル倉庫の場所が特定できない。

 暴力団との全面戦争も避けたい。

 焦りは禁物だ。

 航はあらゆる手段を検討したが結論が出ないまま退屈な張り込みを続けていた。

 その時、携帯電話が震えた。

 『航か?』
 鶴さんからだ。
 『古橋をやったのは小島だ。小島健だ』
 それだけ告げて電話が切れた。
 小島健か。やつなら痕跡を残さず簡単に仕事をこなすだろう。腕のいいナイフと使い手だ。
 奴とは以前に対峙したことがあるが、俺が上手く仕事をこなした。確か奴が中国人の詐欺師のボディーガードとして雇われていた時だった。あの中国人を思い出すと冷静になれず吐き気がしてきた。
 
 その時、人が出てきた。辺りを警戒し安全を確認をしている。

 足立だ。その後ろから小島が後をつけて出てきた。

 顔にはサングラスからはみ出る大きな傷、両手には黒の皮手袋。黒のブーツ。大きな体の小島だ。

 人通りが多すぎてここからは狙えない。防犯カメラも多すぎる。条件が悪い。

 航は車をゆっくりUターンをして車に乗り込んだ二人を尾行することにした。

 間に車を二台挟んで、気づかれないように追尾した。




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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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