第21話 株価の行方

文字数 748文字

「涼一!まだ悩んでいるの?」
 授業が終わり、美咲が僕に歩み寄り話しかけてきた。
「今日の授業も上の空だったよね。先生に怒られてたじゃない」
「怒られた?そうだったかなぁ。美咲、美咲のスカートはやけに短くないか?」
 最近はあんまり学校での出来事の記憶がない。いや、記憶がないというより関心がないと言った方が的を得ている。
「そろそろ、美咲が僕と付き合ってくれたら元気が出るんだけどなぁ」
 おどけて見せながら本心を言ってみた。何でも話せる彼女でもいたならどんなに気が楽になるだろうと想像する。
「なによそれ!今、何を考えているの?」
「ああ。世界情勢と明日の株価の行方。半導体が好調だなって......やはりオルカンかな」
「バカじゃない!涼一はもう帰るの?」
「ああ。鶴さんのところに寄ろうと思って」
「そうなんだ。私も行こうかなぁ」
「な、なぜ?」
「気になるじゃない。涼一の隠し事」
「そんなに僕の事が好きなの?」
「本当にバカじゃない」
「来ない方がいいよ。銃で殺されるよ。そう暗殺される」
「誰に殺されるのよ」
「鶴さんに」
「ジジに殺されるわけないよ。だって私は孫だもん」
「えっ!ま、ま、孫?」
 美咲の唐突の告白に頭が真っ白になった。
「知らなかったの?鶴じいちゃんは私の

です。それはそうと、この前、直斗くんから電話がかかってきたんだけど」
「なぜ、美咲に?」
「友達だからよ」 
「なんか、危ないってよ。涼一の周りの人たち」
「もしかして、僕の親父のことかな?」
「かも知れないわね」
「親父は案外、タフだとは思うけど......龍兄の事があるから......な」
「亡くなったそうね。残念だわ」
「そうだね。辛いよ。父親が亡くなって直斗君も大丈夫かなぁ」
「死んだら終わりだからね」

 本当に人の人生なんて短いと最近感じ始めていた。

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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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