第37話 完結

文字数 586文字

「ただいま」
 親父だ。親父が帰ってきた。 

「どうだった?」
 リビングに親父が入って来るなり僕がそれとなく聞いた。あまりにも不自然な口調になった。本当は事細かに知りたくて仕方がなかった。自ら法を犯し、人の命を奪い、自分の命さえ落とすかもしれない超危険な仕事。それが親父ともなれば興味津々で当たり前だ。

「上手くいった」
 何も変わらない普段通りの親父だ。それは繕っている仮の姿なのか。いつも僕への接し方は単なる何処にでもいる親父だ。

「ご飯できたよー」
 母さんが僕たちを呼んだ。
 
 親父の帰りを待っていた僕たちは夜の11時に食卓に向かった。

 ◇◇◇

 『おい鶴よ、龍は死んだのに航は生きていたらしいな。とうの昔に死んだと思っていたよ』
 『ああ、龍は死んだ。航は生きてたことを最近知ったから、先日仕事をさせた。まだ殺し屋のままだ』
 『引退した奴は殺す』
 『そうだな』
 『まだ使えるのか』
 『航は使える』
 『そうか。使えるならいい。使えなくなったら殺れ。すべてはこの国の為だ。それまでは仕事をしてもらう』

 ◇◇◇

 『じいちゃん、いつまで涼一の監視をしなくちゃならないの?』
 『もうしばらくだ』
 『好きになっちゃいそうなんだけど......』
 『そうか。そうなのか。それはもう好きだってことだな』
 『え~そうなのかなぁ。どうしよう』
 『そうだなぁ。自分の心のままに従え』
 『うん』


 <了>



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登場人物紹介

西山涼一。高校生。

父。西山航。サラリーマン。元殺し屋で狙撃手。

田中龍。父の友人。殺し屋。

下沢鶴男。合鍵屋<鶴>のオーナー。殺しの依頼も舞い込む店。


西山桃子。母。

田崎浩一。父の幼馴染の警察官。

足立進。南を牛耳るヤクザの下っ端のチンピラ。

美咲。涼一の同級生。

山本組の組長。山本。

山本組の坂口。

直斗。龍の息子。

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