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文字数 784文字

 白玉小僧はひょいとウィスキーを喉に放り込んで、
「ともあれ、どういうわけだか、『アンダーテイカー』も『運命の子供たち』に目をつけたらしい。これはかなり危険なことだ。つい半月前のことだが、二人をいきなりさらわれておる。儂らの目の前でな」
「ホントに腹が立つよ……あたしさえいれば……」
「まあ、あの時は誰も予想しておらんかったから仕方がない。誰を責めるでもないのだ。それで、こちらも対応策として捜索と監視を強化した」
「そこに、あんたが現れたわけよ……」
「知ってたんなら、何で早く助けなかったんだよ」
「まさか、あんな奴がいるとは知らなかったからね。あんたの腕なら、チンピラ程度軽く捻るだろうと思ってたんだよ。実力を見るいい機会だし、終わったらゆっくり組織の話をするつもりだったのさ。でも、期待外れだったけどね……」
「期待外れとはどういう意味だ――」
「期待の意味もわからないなんて、あんた、小学校出てんのかよ」
「そんなこと言ってんじゃねえよ――」
「まあまあ、二人とも……とりあえず、こうして助かったからよいではないか」
 白玉小僧が二人の言い合いを制した。
「助かるったって、向こうの奴らだって助けるつもりかも知れねえじゃねえか」
「それはないだろうな。何しろ、チャクラを開くのは儂にしかできん芸当だ」
「じゃあ何でよ……」
「それがわかれば苦労はせん。ともあれろくでもない理由だという事は想像はできる。今も一人の人間に付きまとっているヤツがいるらしいんで、監視しておるところだ」
「そいつも?」
「『運命の子供たち』だ。だが敵の正体を突き止めたいという思いもある。それで、こちらも事を急がんようにしておる」
「そいつも格闘家?」
「いや、女の子だ……普通の女の子、鳥島……鳥島香澄という名だな」
「えっ、まさか……香澄ちゃん?」
 鰐十郎は遠い目をした。
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