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文字数 576文字

「……そう言えば、さっき訪ねて来た人がいるらしいよ。香澄さんいますかって」
「どんな人?」
「僕はたまたまその場にいなかったんだけど、痩せた顔色の悪い人だったらしい。親し気な感じだったから、お兄さんかと思ったって」
「だって、一人っ子だし……」
「だよね……親戚の誰かとか?」
「知らない……でも、最近何か時々妙な人を見かけるんだよね」
「ん?……どういうこと?」
「つまり、ストーカーって言うか。跡をつけられているみたいで、遠くの方にチラチラ見かけるんだよね」
「どんなヤツ?」
「なんとなく暗そうな感じで、俯き加減で前髪をたらーんて垂らしてる。口許が少し歪んでるかな。あんまりいい人相じゃないね。右の頬に傷跡がある。それから右肩がちょっとあがってる。きっと本人が気付いてない癖だと思うけど……」
「何それ……ずっと観察してたわけ?」
「別に観察はしてないよ。見たままを言っただけ……」
 俊介は驚いたと言わんばかりに吐息を漏らした。
「そこまで見られてるとは相手も気付かないだろうな。もしかしたら、研究室に来た男と同じ人物かもしれない」
「あっ……」
 香澄が唐突に声をあげた。
「あそこ、あのカラスなんかつかんでる。雀のヒナみたい。何か可哀そうだな」
 俊介が目を遣ると、小さな点にしか見えないカラスが遠方に飛び去って行くのがかろうじて見えた。
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