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文字数 1,067文字
「それより、鰐のヤツはどうした?」
白玉小僧に話しかけられた、蓮華がワインを持ったままやってきた。
「さあ、なんか鉄砲玉みたいなヤツでさ。天界黒竜空手に目をつけたみたいでそのあたりを探ってるみたいなんだけど……」
「まさか無茶はしとらんだろうな。本部の奴らが出てきたら、今のあいつでは太刀打ちできんぞい」
「そんなん、爺さんから言いなよ。言っても無駄だろうけどね。まあ、大丈夫だと思うけど……。なんか思い悩んでいるみたいだから」
「あいつが? とてもそんな脳があるようには見えんが」
「実はあいつの仲間と連絡をとっていて、何か異変があれば連絡が入ることになってるんだよ。で、今んとこは大人しくしてるって」
「傷の方はどうかな?」
「腕以外はほぼ大丈夫。今朝も院長に注射をしてもらったんだけど、やっぱり少しずつは悪くなってるみたい。このままだとどうなるんだろ」
「埋め込まれた根っこがだんだん大きくなる。一番の心配は根っこが育つとそれなりのワルサをするでな。たとえばトラッカーに似た機能が発動するとかな」
「うーんつまり、それって、鰐ちゃんの居場所が向こうに分かっちゃうってこと?」
「ま、そういうことがあるかもしれん」
「それって……大問題じゃん。こっちの根城もバレバレになっちゃうし」
「そういうことだ。そのためにも早く覚醒してくれんとな」
「覚醒すれば、体の中に入った根っこの成長を止められる?」
「まあ、そううまくいくかどうかはわからんが、少なくともいろんな意味で基礎体力があがり、新しい能力が生まれるでな。対処方法が増えるのだ」
「香澄ちゃんはどう?」
香澄も数日前に白玉小僧の施術を受けていた。白玉小僧が背後に回り、首筋に手を当てると、頭の中心が少し暖かくなったような気がしていた。
「あんまり変わらないかな。でも、体調はいいし、眼も以前に増して良く見えるようになった……そうそう、そのことによる眼精疲労も少なくなったような気がする」
「学校の方はどうなったのかな?」白玉小僧が訊く。
「休学届を出しておきました。研究室の方も当分お休み」
「しばらく、あたしの部屋にいることになったんだよ。ここにいた方が安全だろ。とりあえずできることはやってる」
蓮華が横から言い添えると、香澄は同調するように頷いた。
いつしか日は落ち、空は燃えるような茜色に染まっていた。その照り返しで、ラウンジにいる人の顔もそれとなく赤みがかって見える。
「さてと、そろそろ店に行くか……」
蓮華がワイングラスとトンとテーブルの上に置いた。
白玉小僧に話しかけられた、蓮華がワインを持ったままやってきた。
「さあ、なんか鉄砲玉みたいなヤツでさ。天界黒竜空手に目をつけたみたいでそのあたりを探ってるみたいなんだけど……」
「まさか無茶はしとらんだろうな。本部の奴らが出てきたら、今のあいつでは太刀打ちできんぞい」
「そんなん、爺さんから言いなよ。言っても無駄だろうけどね。まあ、大丈夫だと思うけど……。なんか思い悩んでいるみたいだから」
「あいつが? とてもそんな脳があるようには見えんが」
「実はあいつの仲間と連絡をとっていて、何か異変があれば連絡が入ることになってるんだよ。で、今んとこは大人しくしてるって」
「傷の方はどうかな?」
「腕以外はほぼ大丈夫。今朝も院長に注射をしてもらったんだけど、やっぱり少しずつは悪くなってるみたい。このままだとどうなるんだろ」
「埋め込まれた根っこがだんだん大きくなる。一番の心配は根っこが育つとそれなりのワルサをするでな。たとえばトラッカーに似た機能が発動するとかな」
「うーんつまり、それって、鰐ちゃんの居場所が向こうに分かっちゃうってこと?」
「ま、そういうことがあるかもしれん」
「それって……大問題じゃん。こっちの根城もバレバレになっちゃうし」
「そういうことだ。そのためにも早く覚醒してくれんとな」
「覚醒すれば、体の中に入った根っこの成長を止められる?」
「まあ、そううまくいくかどうかはわからんが、少なくともいろんな意味で基礎体力があがり、新しい能力が生まれるでな。対処方法が増えるのだ」
「香澄ちゃんはどう?」
香澄も数日前に白玉小僧の施術を受けていた。白玉小僧が背後に回り、首筋に手を当てると、頭の中心が少し暖かくなったような気がしていた。
「あんまり変わらないかな。でも、体調はいいし、眼も以前に増して良く見えるようになった……そうそう、そのことによる眼精疲労も少なくなったような気がする」
「学校の方はどうなったのかな?」白玉小僧が訊く。
「休学届を出しておきました。研究室の方も当分お休み」
「しばらく、あたしの部屋にいることになったんだよ。ここにいた方が安全だろ。とりあえずできることはやってる」
蓮華が横から言い添えると、香澄は同調するように頷いた。
いつしか日は落ち、空は燃えるような茜色に染まっていた。その照り返しで、ラウンジにいる人の顔もそれとなく赤みがかって見える。
「さてと、そろそろ店に行くか……」
蓮華がワイングラスとトンとテーブルの上に置いた。