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文字数 863文字

「カップ麺作るわけじゃないから」蓮華が嬉しそうに言って、「で……何か手伝う事ある?」
 院長は机に戻って何かを書いてから、その紙を蓮華に渡した。
「ここに書いた材料を揃えてくれんか」
 蓮華は紙を手に取ってしばらく見ていたが、
「うーん、そうか……とりあえず虫系はパスなんだよね。あとネズミもだめだし、コウモリも嫌い。植物関係は大丈夫そうだけど、アレルギーあるからあんまり草っぱらとか入りたくないし……」
「何じゃい。何が揃えられるんじゃ?」
「悪いけどちょっと無理。それより白玉小僧、呼んでくれた?」
「お、おう……」院長は古い柱時計を見上げた。「もう、そろそろ来る頃じゃろう」
「白玉小僧?」
 妙な名前に鰐十郎は反応した。
「まあ、この組織の先駆者的な存在というか……院長の……ボーイフレンド的な……」
「馬鹿こけ。あんなんが何でボーイフレンドか――」
 院長は注射の入った銀色のケースを机に叩きつけた。
「一生の不覚じゃったわい……」
 悔しそうな顔をした。それから、再度鰐十郎の体を点検して、
「もう、服を着てもいいぞ……」
 それだけ言うと、奥の部屋に行ってしまった。
 入れ違いに先ほどの看護師が入ってきて、二人を廊下の先にある病室に案内した。病室と言ってもそれらしい設備があるわけではなく、粗末なベッドと机があるだけの、簡素な作りだ。蓮華はいきなりジャンプして、そのままベッドに座った。
「うん、いいクッションだ。これならよく眠れると思うよ」
 鰐十郎は部屋の中を確認し、窓から通りを眺めた。夜の泥沼通りは古臭い街灯がうねりながら続いているだけの侘しい景色だ。夜明けが近いこの時間になると、さすがに酔客も歩いていない。
「ここがあんたのねぐらね……」
「一泊三千円ってとこかな……」
「ジョーク? あんたはタダだよ。あたしの口利きがあるからさ。ちなみにあたしの部屋は一つ置いた隣」
「ここに住んでんのか?」
「そうだよ。店まで近いから便利なんだよ。薬も簡単に手に入るしさ」
 蓮華に促されて、再び廊下に出る。
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