17-1

文字数 1,132文字

 突然背後のドアが開いて、二人の女が入って来た。
 意識はしっかりしているようだが、香澄は頭から血を流している。そして後ろから香澄を拘束し、首許にドライバーを突き付けているのはマリリンだった。
 一旦解けかけたツタが元に戻り始める。ぐいぐいと手足を締め付け、蓮華の体を再び柱に押し付ける。
「どうやら、またまた形勢逆転というとことですね」
 アイビーは皮肉な笑いをもらし、再びサングラスをかけた。
 あたりはガソリンの臭いに満ちているが、蓮華は発火させることができない。自分の身を守ることは出来るが、マリリンと密着した状態の香澄を救うことはできないのだ。
 アイビーは武器を打ち鳴らして、《吸血蔦》を放つ。それはヒルのように蓮華の体にまとわりついた。《蛍》を飛ばせば燃やすことが出来るかもしれない。だが、室内は気化したガソリンで満たされているのだ。
 それは鰐十郎の腕に深く救っている《吸血蔦》と同じものだ。拘束された状態で、体中の皮膚を食い破ってツタが体内に侵入してくる。ブスブスという音がして、小さな煙が立ち上る。グイグイと体内に侵入したツタを、蓮華は侵入する端から体内で焼いているのだ。
「おや、妙な技を使いますね」
「いくらやっても無駄だよ……」
「そうですか、自分に対するダメージも深いと見ましたが……どれどれ」
 アイビーは次々と《吸血蔦》を放つ、それは蓮華に絡みつき体内に潜ろうとするが、蓮華の内部で次々と焼かれて消滅していく。だが、蓮華の方も見た目以上のダメージを負っている。
「こちらのネタは無限にあるが、そちらはいつまで耐えられるものやら」
「ちょっと――」アイビーの後ろで相変わらず香澄にドライバーを突き付けているマリリンが叫んだ。「いつまで、そんなことやってんの。そんな無抵抗の女、さっさとやっつけちまいなよ。仲間でもやってきたらどうするつもり?」
「確かに……」アイビーの口許が歪んだ。大きく武器を振ると、蓮華の周囲に数本のツタが太い氷柱のように立ち上がる。そして、一斉に蓮華の両手を捕えると、あらぬ方向に捻じ曲げ始めた。
「こいつの言う通りだ。悪いけどここで決着を付けさせてもらうよ。手さえ使えなければ怖い相手ではないんでね。後はどこかに運んで、焼こうと……煮ようと……」
 弱々しいツタも束となれば大きな力となる。太いツタは強引に蓮華の腕を曲げていく。骨がギシギシと音を立て始める。蓮華の額に玉のような汗が浮かび始める。
 その時だった。シャッターに激しい衝撃が走った。大きく内側にへこみ、裂け目から外の光が差し込んでいる。再び衝撃。誰もが車で何度も激突しているのだと思った。だが、大きく開いた裂け目から入って来たのは鰐十郎だった。
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