7「ぼくらは高校生」-3

文字数 1,116文字

「楽しい時間はアッと言う間に過ぎるもんだな…ボク、アイス買って来てやるよ
「晶、誤魔化さないで。まだ9時よ」
「いや、よく一時間頑張ったな。翔太、縄跳び解いて。玲奈、一緒に行ってやってくれ」
優斗が笑って送り出す。
「やったー」
晶は転がるようにサンダルを引っ掛け部屋を飛び出した。

外は体温並みの酷暑だった。
通りの向こうに陽炎が揺れている。
「部屋に辿り着く前に倒れそうね」玲奈が呟く。
「暑いのは平気だ。勉強より辛い物は無ぇよ。まさか高校生にもなって勉強させられるとは思わなかった」
「何、バカなこと言ってるのよ。自分のためでしょ」
ポプラ並木ではクマゼミがシャワシャワと合唱している。
「やだね、これ食ってゲーセン行こう。もう、勉強なんかしねぇぞ~」
晶がポプラに八つ当たりする。
セミたちも、脱水対策をしているのか、おしっこをしないで飛び立った。

「晶、ダメよ」
玲奈が悲しい顔をした。
「へえへえ、わかりやした。部屋に戻るよ」
「わかったわ、でしょ?晶。言葉使い、直ってないわね」
「ってか、玲奈が前より女っぽくなったんじゃネ?」
「んー、周りの影響かしら?お嬢様が多いのよ」
「ボクだって、周りの影響だよ。玲奈、向こうで優斗と毎日会ってんのか?」
「ええ。学校終わったら一緒に図書館で勉強するの。マンションには滅多に行かないわ」
「そうなんだ」
晶は意外そうに目を見開く。
「そういうとこ、固いのよね…晶は?
毎日、安藤とどこで会ってるの?」
「ボクんちのリビング」
「晶の部屋じゃないのね?」
「母さんがそうしろって。リビングしかクーラーねぇし」
「リビング、道路から丸見えよね?流石、晶のお母さん」
「へ、何が?」
「そのう……晶は安藤と付き合ってるのよね?抱き締められたことある?」
「え?い、いや、なんつーか、元々、毎日プロレスごっこしてたし、その延長っつーか…」
「じゃあ、もう・・・・・・キスした?」
「ええっ。す、するかよ、んなもん」
晶が赤くなった。
「そう…やっぱりね」
「玲奈は……したのか?」
晶がゴクンと唾を飲む。

「当たり前でしょ。そのくらい。中3の時、付き合う前に」
「……し、知らなかった。」晶の目と口が真ん丸になった。
「でも、それっきりなの。安藤がしないってことは、晶はきっと大事にされてるのよ
「玲奈だって、それきりってことは大事にされてんだろ?」
「ちがうわよ。晶、大切な物って使わないで取って置くよね」
「ん?…まあな」
「じゃあ、一度使ったけど、使わないのはどんな時?」
「そりゃ、飽きたら使わねーけど一回きりで使わねーなんて、よっぽど、つまんネーっとか…あっ、あ、いやその…」
晶は慌てる。
「そういうことよ」
玲奈はアイスを押し付け、無表情で外付けの階段を上がった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み