7「ぼくらは高校生!」-1

文字数 1,656文字

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ビッグな安藤翔太(あんどうしょうた)、奔放な栗田晶(くりたあきら)、ちょっぴり気難しい堀之内優斗(ほりのうちゆうと)
三人は幼稚園からの大親友で、いつも優斗の部屋に集まっては大騒ぎをしていた。
中3の夏、美少女、坂巻玲奈(さかまきれな)が仲間に加わり、カップルとなった優斗と玲奈は東京の高校へ行く。
高1の夏休み、4人は久々に優斗の部屋に集まった。

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「よっ、優斗。居るかぁ~?」
朝一番にやって来た晶がドアを勢いよく開ける。
部屋の奥でPCに向かっていた優斗は横に流した前髪を払うように、入り口を見た。
「晶…?」
優斗が口を開けたまま、固まる。
デスクの上では待ち受け画面の金魚が白い泡を食べている。
「なんだよ、優斗。あんまり変わって、驚いたか?」
ドヤ顔の晶は相変わらずのボサボサショートヘアだ。
「いや……あまり変わらなくて驚いた」
優斗は、ついと目を逸らす。
「そこまで言う。入学式はビシッと決めたんだけどな」
「ズラでも被ったの?」
「ちっちっ」晶は人差し指を横に振り、「スウィ○グ・ツーブロックのなんとかジェントルマンって奴」髪を一筋つまみ上げる。
「男っぽいな」

「うん。モテモテだった。隣の女子がいっぱい見に来た」
「女子にモテてどうす……」

ドカドカドカ…
階段を駆け上って来る乱暴な足音。

バーン!

「おーー!優斗、久し振りだなあー」
近所中に響く大声でゴジラが乱入した。
「翔太、早く締めろ。室温が上がる」
優斗が睨みつける。
「閉めてもムダ、翔太がいるだけで3度は上がるって」
晶が突っ込む。

トントントントン。
軽快なリズムと共に玲奈が現れる。
肩紐の付いたピンクのオフショルブラウスに水色のキュロットミニ。
前髪はポンパドールでまとめた、赤いリボンのポニーテール。

「坂巻は相変わらずオシャレだな。優斗のファッションもおまえの影響か?」
「へ?何のこと……うああっ、優斗がティーシャツをっ」
晶が大げさに驚く。
襟付きしか着なかった優斗がくすんだピンクのビッグTにデニムのスキニ―パンツを難なく着こなしていた。
「何を今更」
翔太が突っ込む。
「玲奈がどうしても着ろって言うから……」
優斗がブツブツと言い訳をする。

「わお。2人とも変わらな…安藤は益々デカくなったわね」
玲奈が翔太を見上げる。
「俺さ、工業行ってから10センチも伸びちまって」
「差が開いたわね」
玲奈は気の毒そうに晶を見る。
「フン。どーせ、ボクは成長しない万年小学生だよ」
晶が拗ねる。
「そんなことねえぞ。この間、ケーキ焼いてくれたじゃねぇか」
「ええっ?晶がケーキ?」
玲奈は髪を逆立てて凍り付いた。
「不味かっただろ?」
晶がボソッと返す。
「そんなこたねえぞ。ただ、身体中の水分吸い取られて窒息しそうになった」
「それを不味いって言うんじゃ?」
優斗が突っ込む。
「うるせえ。晶が俺のために初めて焼いたケーキだぞ。クソ、飾って置くんだった」
「そうだ。食べなければ良かったんだ」
晶が不機嫌になる。
「違う、誤解だ晶。ちゃんと水を飲ませてくれたし…愛を感じたぞ」
「いや。誤解してんのは翔太だ。あれは賞味期限過ぎて固まったホットケーキミックスを水で煉ってレンチンしただけだ」
「は?俺のために作ったんじゃ?…」
「不味そうだけど面白いから見せたら、翔太が食っちまって…」
「俺って一体……」
翔太がガクリと頭を下げた。
「だから、ボクは成長なんかしてねぇってばよ」
「いや、気にするな。晶は今までと変わらなくて良いんだ」
翔太が慌てる。

「いや、変わった」
優斗が呟く。
「え?」
三人が振り向く。

「翔太は毎日、見てるからな……今朝、驚いたのは、あんまり変わったから…」
優斗の頬がほんのり赤くなる。
しかし、例え頬の皮一枚の変化でも玲奈は見逃さない。
「はあー?私、何の為に東京まで付いて行ったのー?」
ドカッ!
玲奈の拳骨が壁を突く。5ミリはへこんだだろう。

「お、落ち着いて。玲奈は変わろうったって、これ以上、美人になりようが無いだろ」
「そうかしら?」
玲奈は疑わしそうに横目で優斗を見る。
「うん、そう」
優斗がカクカクと首を振る。
「なら、いいのよ」
玲奈はにっこり微笑む。



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