7「僕らは高校生!」-8

文字数 1,424文字

「安藤―――!」
玲奈が走って来る。
「おう坂巻、台本あったのか?」
「安藤、来て。戻るのよ部屋に。一緒に現場を・・・・・・ハァハァ」
「は?」
「私たち裏切られたのよ。あの2人勉強なんか、してな・・・・・・」
「坂巻、何言ってんだ、落ち着けよ。晶が俺たちを裏切る訳ないだろ?」
「なによ。安藤も優斗も晶、晶って。誰も私のことなんか・・・・・・」
「だから、落ち着け。優斗だって仲間を裏切るような奴じゃない。俺は信じてる」
「バカじゃないの?私の言うことより晶や優斗を信じるのね。そうよね、昔からの付き合いだものね」
「晶が優斗を尊敬してることなら知ってる。心の中で大切に思ってることも。それでも、俺を好きだって言ってくれた晶を信じたい。晶が俺と付き合ってくれるなら、俺はあいつの何番目でもいいんだ。あいつが俺の所に戻って来るのを待つだけさ。それを信じるって言うなら、そうなんだろうな」
「このヘタレがっ」
「そうかもな。戻るなら、坂巻一人で戻れよ。俺はいい」
「いくじなし。怖いんでしょ、真実を知るのが」
「信じてるんだよ」
「もういいわ。私もピエロじゃないし。明日のシーン15で必ず晶にキスするのよいいわね?」
「え、そ、そういうの、無理矢理するもんじゃねえだろ」
「付き合ってるんでしょ?女は初めてキスされた男に惚れるものなのよ。そしたら、安藤も晶の一番になれるのよ、わかった?」
「俺が晶の一番に……?」
翔太は舞い上がった。



「シーン15スタート」
玲奈が声を張り上げる。
「僕達も行くのか?…いや、ごめん、行きます」
玲奈に怖い顔で振り向かれ、殺気を感じた優斗は咄嗟に謝り、大人しくカメラを構える。。
「……」

「大森神社じゃんかよ」
「…だな」
「どーすんだ?ボク、台本見てねぇ」
「お、お、俺もだ」
翔太は大汗をかき始める。
後ろで玲奈がメガホンを振り上げ山の上を指さしている。
「上れって?」
「…だな」
「こんな夕方に?」
玲奈がサーチライトを振り上げる。
「明かりがあるから大丈夫って言ってるぞ」
「しかし、ここは都市伝説が…晶、大丈夫か?」
「ボクは平気だよ。じゃ、上がるか」
「えっ、上がるのか?」
「何だよ、怖いのか?」
「バカ言うんじゃねぇー、ほら、行くぞ」


山道を登る二人の後ろからカメラを構えた優斗とライトを持った玲奈が着いてくる。
翔太はホッと胸を撫で下ろした。
何年も人が足を踏み入れた形跡も無い。
道なき道を行く。翔太が先に立って一歩ずつ慎重に進む。
次第に草深くなり、晶は跳ね返った草に隠れて見えない。
「お、おい。いるか?」
「いるよ。何、びびってんだ?」
「違ぇよ、おまえを心配してるんだ。おい、何か喋れ」
「んー、ここって、あれだろ?ジョンって犬が行方不明になったって。浮浪者が白骨化して発見され……」
「や、やめろ、黙って歩け」
10分位経った時、翔太が音を上げた。
「いつまで登るんだ?ってか、道、合ってるか?」
その時、足元でガサガサと音がし、遠くで変な鳴き声がした。
「ヌ、ヌエだーっ」
大男が飛び上がる。
「ヌエって?」
「知らねぇのか?サルの顔、タヌキの体、トラ の手足、尾はヘビの化け物だ」
「へえ、見てみたいな」
「見たくねぇー、走るぞ」
翔太は晶の腕を掴んで走り出した。
草を掻き分けながら滅茶苦茶に進んだ。
硬い草や木の枝が翔太の体にバチバチと当たって折れる。後ろの晶は無傷だが、翔太のシャツはボロボロになった。
不意に開けた所に出た。社務所周辺は草が生えないようだ。
翔太の頭の中にシーン15が浮かんだ。


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