7「ぼくらは高校生!」-5

文字数 1,283文字

「映画コンクールってどこが主催してんだ?」
「ここ(地元)のケーブルテレビよ。5位入賞まで放映ですって」
「へえ~、テーマとかあるのか?」
「青春よ」
「…だっせ」翔太が呟く。
「青春か。青春はバトルだよな。イヤッホー」
晶はジャンプして空をキックした。
「あ、良い感じね。予行演習しましょ。そこの広い所で思い切り暴れてみて」
「おう、任せとけ」
晶は真剣な表情で大きく息を吸いこみ、気を高める。
「はっ!」
ポーズを取ったまま動かない。
「何やってるの?」
「分からないか?今のは、ドラ○ンボール天○飯の○身の拳だ」
「分かるかっ」
カメラを抱えた優斗が突っ込む。
「4人になる分身の術だ。力も1/4になる弱点がある」
「意味ないでしょ。ええと、もっと動きのある技が良いわ」
「他の技やってよ。もっと動きのあるものがいいわ」
「俺が相手だ、晶、来い」
翔太がシャツを脱ぎ捨てる。
「やったね。〇村剣心、九頭〇閃!」晶がシックスパックに手刀で切り掛かる。
「わっはっは、かゆくもねぇ」
「もっと、動いてったら」
玲奈が注文を付ける。
「よおし!あま〇けるりゅうのひらめき~~~~!」
「はあ……馬鹿バカしい……」
優斗がカメラを降ろす。
「優斗、しっかり撮って」
玲奈が叱りつける。
「はい」
再びカメラを構え直す優斗。将来、女房の尻に敷かれるのは間違い無しである。


撮影の予行演習が終わり、約束通り、晶は宿題をやるために居残り、翔太は玲奈を家まで送った。
「おい、坂巻、この台本は何だ?」翔太が最後のページを広げて突き出した。
「あら、シーン15……読んだの?」
「たまたま、このページだけ見えたんだよ」
「晶は絶対、読まないわよね」
玲奈がウインクする。
「気に入らねえな。俺は降りる。見せもんじゃねぇぞ」
「あんたが晶とすべきことをしないからでしょ?」
「は?な、な、何を…」
翔太が狼狽える。
「決まってるでしょ、キ……」
玲奈が唇を突き出して目を瞑った。
「うわあーっ」
翔太が走り出す。
「え?ちょっと待って。何よその反応。失礼でしょ?」
玲奈が追い駆けようとして、倒れる。
「あー、痛っ、足が―っ」
「どうした?大丈夫か?」
戻ってきた翔太のシャツを玲奈がガシッと掴む。
「今、何で逃げたの?」
玲奈が目を怒らせて聞く。
「何でって…逃げるだろ。貞操の危機だぜ」
「馬鹿ね。男でしょ?据え膳食わぬは……って知らないの?」
「知らねぇよ」
翔太が玲奈の手を掴んで引き離す。
「晶だったらどうする?」
玲奈が目を吊り上げて迫る。
「あいつはガキだから、そういうことはしない。デートだって、今までの延長でプロレスしたり、サッカー見に行ったり、そういう気にはなれねぇっつーか、そういうことしちゃいけねぇっつーか…」
「フウ…やっぱりね。だから作ってあげたのよ、そういう機会」
「バカか、人前でできるかよ」
「2人きりにしてあげるわ」
「え?そういう展開かよ?」
「台本と違うけど、晶は読まないでしょ?」
「うーん、そうか、しかし、場所が…いや、何でも無ぇ、じゃあな。坂巻感謝!」
翔太は手を合わせると、走り出した。
「その代わりね、交換条件として……あー、あれ、安藤?もういない・・・・・・」


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