7「ぼくらは高校生!」ー4

文字数 1,527文字

「おお、よく、無事にアイス持って帰ったな。坂巻がいなきゃ、1人で3つ食ったろ?前科5犯だかんな」
「うるせぇ。玲奈に感謝しろよ」
晶はアイスの袋を翔太に放り投げた。
「あ、俺、こいつ」翔太はガサゴソとガ○ガリ君のアイスコーヒーを取り出し、「俺の顔に何か付いてるか?」と聞く。
「いや。ボク、メロン」
手を伸ばした晶の頬は少し赤かった。

「晶。さっき、まわりの影響って言ったわよね。林業科の女子は乱暴なの?」
「女子なんていねぇよ」
「え?いないの?」
アイスの外装を丁寧に剥いでいた玲奈が手を止める。
「なにーーーーー?」
翔太が大声をあげる。
「なんだよ。いきなり…」
晶が耳を塞ぐ。
「聞いてねぇぞ、ンなこと」
翔太が大きな目と歯を剥き出して怒る。
「聞かれてねぇもん」
「大丈夫なの?晶」
「何が?どうせ、男だと思われてるし」
「まさか……」
「入学式出てないし、スカート嫌で、朝から体操服着てるし」
「トイレは?」
「教室の真ん前の男子トイレの個室で」
「バカバカ、何やってんの。先生に言うのよ」
「いいよ。不自由ねぇし。誰も気付かねえの。自信持ったよ」
「持たなくていいの。駄目よ。そんなの」
「出席簿も男ンなってるし……」
「何ですってーーーー」
「だから、いんだよ。今更言えねぇ。男だから合格できたかもしれないし」

「ねえ、ホントに何も無いの?」
「何もって、何が?」
「ほら…男ばっかだと、可愛い男の子が餌食になるとか……」
「ああ、ボクより女っぽいのがいて、いつも襲われてる」
「きゃー、あるんじゃない。晶は無事なの?」
「ボクには誰も近寄らないよ」
「どうして?」
「声変わりもしてない女男って言われて、ボコボコにしてやったら、狂犬だって怖がられて」
「それも困ったものね」
「癪なのは体育が一番じゃねぇってことだ」
「当たり前だろ。男と競って勝てるかよ」
「フン、バカにすんな。これでも攻撃ミッドフィルダーだぞ」
「へえ、凄いな。勉強は?」
優斗が感心する。
「うるせえな。だから教えてくれって頼んでるだろ」
「…って、偉そうに言うか?」


「それより、面白い計画があるの。ね、優斗」
玲奈が目配せをする。
「え?…ああ…」
「もう、私が話すわ。地元ケーブルテレビが高校生映画コンクールを開くの。4人でチャレンジしてみない?
「へ?なんで映画?
「ほら、晶、9月に出るゲームソフト欲しいって言ってたでしょ?
「ああ。でも、この前、他の買っちまったから、もう小遣いが・・・・・・」
「1等3万円の賞金が貰えるのよ
「やる」
「即答かよ」
「じゃあ、準備しましょ」
「おいおいおい、俺はやるって言ってねぇぞ」
翔太が歯を剥き出して威嚇する。
「いいじゃねえか、どうせ夏休み暇なんだし」
晶は乗り気である。
「でしょ?面白いわよ。優斗が言い出したのよ」
「え?優斗が……嘘だろ?」
翔太が眉を潜める。
「いや、その……いい思い出になるんじゃないかと……」
「もう、いいから早くやりましょ。脚本は私に任せてね。はい、台本」
玲奈はホチキスで閉じた手作りの冊子を四部テーブルに置いた。
「なんで、こんなんがもう出来てんだ?」
「用意が良いでしょ。ほら、締切2週間後なんだから読んで」
「主役栗田晶、安藤翔太。おー、すげぇ。なに?ぼくらの…何て読むんだ?
「キックよ。ぼくらのキック。二人芝居よ。晶、戦闘物、好きでしょ
「やった。ボク強い役がいい」
「メチャクチャ強いし、面白いわよ~」
「ボク頑張る」
晶がシャドーボクシングを始める。二の腕の力こぶを盛り上げてヤル気満々だ。
「勉強はどうすんだよ」
翔太が怒っている。
「映画製作の後で毎日1時間やればいいでしょ」
「ゲッ、やるのか?」
「それが条件だな。教科は任せる」
「あっ、宿題でもいいかな?」
「まあ、いいだろう」
優斗と翔太が渋々承諾する。

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