7「ぼくらは高校生!」-7

文字数 1,278文字

「本気で入賞しようと思ってるのか?」
「まさか。映画はダシよ。」
「だったら、あまり無茶をさせるな。晶は夕べ寝てないかもしれない」
「え?どうして?」
「少し難しい宿題を出したんだ」
「宿題を教わりに来た晶に更に宿題を?」
「宿題をするために必要なことだよ」
「あら、これだって、二人の進展のために必要なことよ。でないと、私が不安だし……」
「どうして?」
「なんでもないわよ。ほら、カメラずれてるっ」
「あ、ああ・・・・・・」

これのどこがラブストーリーなんだ?
優斗は首を傾げ、台本に目をやる。


台本『ぼくらの初kick』
1ページ目に概要がある。
晶はこれすら読んでいないだろう。


****************
舞台は、とある男子校。正太(しょうた)は学校一の乱暴者でクラスを牛耳っているが、自由奔放な(あきら)に、いつも逃げられてしまう。
喧嘩を吹っ掛ける正太に明はスポーツで決着を付けようと提案する。
サッカー、マラソン、レスリング。
全ての勝負で2人は引き分け、正太のイライラは頂点に達する。
最後の舞台は都市伝説の出回る大森神社。
そこで二人は不思議な体験をし、無二の親友となる。
****************


「大森神社…」
優斗は顔をしかめた。



あっという間に日は過ぎて、撮影最終日の前夜のことだった。

「お疲れ様、優斗、あと頼むわね。晶、勉強頑張って~」
「おう!」

「ねえ、安藤。晶もよく頑張ったわよね。驚いたわ」
帰り道。玲奈が言う。
「だな。宿題も勉強だかんな」
「それが、優斗ったら、更に宿題を出したっていうのよ。それを晶は夜遅くまで頑張ったみたい」
「晶が夜まで宿題を?信じられねえ」
翔太は疑う目付きで言った。
「あ、いけない。台本、忘れて来ちゃった。取って来るわ。安藤、帰っていいわよ」
「おう、またな」

優斗の部屋の前まで戻った玲奈はドアに手を伸ばした。
中から話し声が漏れ聞こえてくる。

「優斗、玲奈にキスしたんだってな」
「・・・・・・に聞いたのか?」
「一度きりだったって、玲奈が悩んでたぞ」
「誤解だ、ぼくは玲奈にキスなんてしていない。それより、・・・・・・は気付いてないのか?」
「全然。ボク・・・・・・が好きだったんだ。あの時からずっと・・・・・・」

 何?今の会話。どーいうこと?
晶と優斗は、出来てたのーーーーー?
しかも、私にキスしたことを否定するなんて……
玲奈は息が止まりそうになり、思わず手を引っ込める。

「そうだと思った」
「これって裏切ったことになるのか?」
「自分の気持ちに嘘をつく方が悪い。自分を裏切るな。晶、本気なら・・・・・・」
「うん、でも・・・・・・やっぱ、やめる」
「いいから、来い。・・・・・・ああ良い感じだ」
「・・・・・・良いのか?なんかハズイな」

ドアにピタリと耳を付けた玲奈の全身がワナワナと震える。

「晶、今日で最後だ・・・・・・これで僕も頑張れるよ」
「うん。優斗が帰って来てくれて良かった」
「晶、僕はこの唇を誰にも渡さない。これだけは僕に・・・・・・」
「え、だめだよ、優斗やめろ、あ・・・・・・」
会話が途切れた。


全身の血が怒りで燃え滾るのをグッと堪え、玲奈は来た道を取って返した。

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