2「ぼくらのスペクトル」ー3

文字数 1,047文字


「優斗、こんくらいでいいか?」
翔太と晶がペットボトルを山ほど抱えて部屋に戻って来た。
優斗の計画に従い、早速、実験を開始することになったのだ。
「うん。蓋に穴開けてくれ。出来たら、この長いチューブを差し込む」
優斗がキリを転がした。
「それ、金魚に空気送るやつだよな」
「一体、なに作んだ?」
「これだ。オリジナル光合成発生装置兼測定器」
優斗がクローゼットから奇妙な物を取り出した。
「おー、すげぇ」
「面白れぇー」
翔太と晶は顔を見合わせて大喜びした。
「このボトルに水と水草を入れ、光合成によって生成された酸素をこのチューブに送り込み、10分置きにペンで印を付けて光合成量を測る」
「これ全部か?」翔太が確認した。
「比較実験は多い程いいが……取り敢えず5つでいい」
「比較って何をだ?」
「初めに水。色んな水集めて……他にも色々やってみたい」
「よーし、任せとけ」晶が右手の親指を立てて見せた。





「水を5種類用意する。晶は入浴剤溶かして。翔太は3分間、息を吹き込んでくれ」
「そう来たか」
「重曹は僕がやる。後は……」
「これはどうよ?」
翔太が飲みかけのボトルをドンッと机に乗せた。
「サイダーの泡は二酸化炭素だぜぃ」
翔太はドヤ顔だった。しかし、優斗は即否定。
「炭酸水は常時、泡吹いてる。使えないな」
「存在感はあっても役に立たない。誰かと似てるな」
晶が翔太を見る。
「おまえ、そこまで言う」
翔太は苦笑いした。

優斗は5つのコップに5種類の水と葉を入れた。
その結果、どの水でも光合成は行われた。
「重曹を使った水が一番、酸素の発生量が多く、しかも安定していることが判った」
優斗が満足そうに言った。
「やあー、お疲れーしょん。今日はここまでだな」
翔太が腰に手を当て、サイダーのボトルを乾杯の形に持ち上げた。

   
「は?今から本番なんだけど……」
優斗が呆れる。
「え、まだやるのか?」
翔太は渋々ボトルを机に置いた。
「翔太ぁ、ビッグな実験って言っただろーが」
晶が翔太の腹を目掛けて足を振り上げた。
「フン、短けぇー足」
翔太はヒョイと足首を掴んで晶をぶら下げる。
晶は逆さ吊りになったまま、翔太の腹に北斗百烈拳を叩き込んだ。
「アタタタター!おまえはもう死んでいる」
激しい動きに晶のTシャツがペロンとめくれ上る。  
不意に翔太が手を離し、晶は頭から落下。咄嗟に身を反らせ、猫のように着地した。
真っ赤な顔でフリーズする翔太。  
晶が素早く立ち上がって身構えた。
「やったな翔太……あれ、どこ?」
「……」
優斗は、ゆっくりとドアの方を指さした。




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