7「ぼくたち高校生!」-10

文字数 1,305文字

もうひとりの自分と同時に二人は口を開く。

「俺たち……
「ボクたち……
「「入れ替わってる?」」

♩君の前前前~♪

「ざけんな。君の名は。か?身体が入れ替わるなんて、そんなバカなこと……」
「でも、入れ替わってるよな?」
「だな」
「「わー!どーすんだー??」」
「この神社の言い伝え知ってるか?」
「あ、あれだろ?
― 境内で心から想う人に口づけをすると、その人の全てが得られる ―
「って、身体が入れ替わるってことだったのか?」
「「嘘だろ?ヤベーじゃん。」」
「はもるな」
「だって、おんなじこと考えてんじゃん」
「とにかく、元に戻らなきゃ」
「どうすれば?」
「「もっぺん、すればいいんだ」」

二人は磁石に吸い寄せられるように、もう一度熱い口づけを交わした。
背伸びをしていた晶がふらつき、翔太は晶を軽く支えたまま、身体を離した。
二人はじっと見つめ合う。
瞳は安堵の色に染まり、潤んでキラキラと輝く。

「「良かった……」」
互いの顔をしっかりと確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
ジワジワと口角が上がり、どちらからともなく笑い出す。
「だよな。冗談じゃねぇよな。晶がこんな、むさ苦しい野郎になっちまうなんてよ」
「そうじゃない。ボクは翔太になりたいんじゃなくて翔太が好きだからいつも一緒にいたいんだ」
「晶……」
「ボクが一番好きなのは翔太だ」
「優斗じゃねぇのか?」
「優斗は尊敬してる。実は映画が出来たら渡すはずだったんだけど、これ、作るの手伝ってくれたんだ」
「なんだ?名刺?」
「うん。情報学習の課題でオリジナルデザインの名刺を作るんだ。画像処理とレイアウトを優斗に教えて貰った。優斗、絵も上手いだろ?コツ教えて貰って徹夜で頑張って上手く描けるようになった。作品は先生のEメールアドレスへ送るんだけど、サイズが100KB以下だからあまり、描き込めなくて苦労した。線を削ったり、どうしたらKBが小さくなるか実験したりしてさ。ボク、実験好きなんだ。去年は自由研究、出来なかったろ?ずっと、やりたくて、優斗が出した宿題のKB実験してたら凄く楽しくてさ。でも、翔太へサプライズだから話せなくて辛かったけど……。夕べ、仕上げして貰って完成したんだ」
「へえ、そうなのか」

楽しくお喋りをしながら二人は山を下りた。
「カーット!」
サーチライトが浴びせられ、玲奈が飛んで来る。
「ごめんね、優斗がカメラ落として、壊れちゃった」
「悪いな」
「制作中止だわね。シーン15出来なくて残念だったわ」
玲奈が悔しそうに口を尖らす。
「「……」」
晶と翔太は顔を見合わせて真っ赤になった。
「えっ?もしかして……」
玲奈がパッと顔を輝かせた。
「もう、いいだろ?帰ろう」
優斗がカメラをぶら下げて、サッと踵を返した。
「えっ、待ってよ、優斗」
玲奈が慌てて追いかける。


「どして、おこなの?晶と安藤が上手くいったみたいだから?」
「怒って無いよ」
優斗が足を止めて振り向いた。
「あいつら、来ないな…」
後の様子を窺う優斗。
月明かりの下で、いきなり、玲奈の腕を取り、肩を抱き寄せる。
「え、優斗……?」
優斗はフワッと玲奈に口づけをした。
玲奈は驚いて目を見張り、そして閉じた。
一瞬にも永遠にも思える時間の後、二人はスッと離れる。

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