1「夏の終わりの人体実験」ー3
文字数 619文字
夜8時。
3人は、それぞれ家を抜け出して、ツツジ公園へ向かった。
昼間は晴れていたが、俄かに冷たい風が吹き、遠くで雷が鳴り始めた。
「おーい、雨降りそうだけど、どうする?」
晶が公園の手前で叫んだ。
「何を言う。もう準備は整っている」
優斗が車の進入止めを懐中電灯で照らした。
ビッチリと巻きつけられたニクロム線が光り輝いている。
「ヒューッ。テンション上がるぅ」
「さっすが、優斗。半端ねぇな」
翔太が感心する。
「風が強くなってきた。さあ、急ごう」
優斗が懐中電灯を地面に置き、リュックから実験器具を取り出し始めた。 興奮を抑え切れない晶は、妄想を膨らませる。
「ウン千倍の人間電磁石なんて、すげぇよなぁ……学校賞、間違いなしだ。なっ、翔太?」
「ちっせ。 県知事賞って言え」
「 テレビ局、来っかな?」
「インタビューは俺だぜ。発見者だしな」
「ずるいぞ、ひょうたんからコマのくせに」
「インタビュー!……おい、ほら、早く」
翔太が指先で急かす。
「うぜぇ奴だな……えーと、安藤君、あなたが発見者?凄いっすねぇー」
「あざーっす。ま、発送の転換っつーか、俺天才だし、イケメンっすから」
「イケメン関係ねぇだろ……ってか、どこがイケメンだ。東京タワーでも登ってろ、このキングコング」
「ゴホンッ。楽しそうだな。いい加減、身体を動かしてくれ」
優斗が釘を刺した。
「よっしゃぁ、電解えきぃー」
「汗、あせ、えんぶんっ」
2人は口々に叫びながら走り回った。