4月6日 石ころ2:思い上がり

文字数 461文字

 猟犬が獅子を見つけて追いかけた。
 噛み殺してやる!

 獅子が振り返り、面と向かって吠えると、猟犬は怯えて逃げ出した。

 情けない。

 猟犬がネットの掲示板で獅子の悪口を書いた。
 知能指数が低いくせに、どうして何にでもしゃしゃり出るわけ? 忘れられたくないの? 寂しがりのお子様かよ。

 獅子は発信者情報開示請求を行い、猟犬の身元を特定し、猟犬の家にやってきた。

「同じことを言ってみろ」

 猟犬は部屋の隅で震え、ごめんなさいごめんなさいとつぶやくだけだった。

 情けない。

 獅子は代償に猟犬をこき使い、食べ物を持ってこさせ、伝令に何キロも走らせた。
 猟犬の家を我が物顔で歩き、両親を蹴飛ばし、蓄えを根こそぎ奪う。

 電源を引いてスマホ動画に夢中だ。

 全く情けない。

 百獣の王というのなら、臣民の弱さを受け入れて、より強く成長できるよう促すものだろう。
 恐怖でしか支配できないとは、所詮獅子も力だけの弱者か。

 猟犬は両親を連れて逃げ出した。
 振り返って言うには、

「あんな思い上がったヤツを獅子と思っていたなんて、オレ、ほんと、情けないな」
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