4月24日 お金の本8:10代で80代の人間は存在しない

文字数 551文字

 雨好きの男に尋ねる。

「梅雨の時期は傘を片手にはしゃぎ回るんですね」

「そんなわけないだろ。お気に入りの靴が濡れる、靴下まで()みて不快だ!」

 瞼を(しばたた)く。

「雨が好きなのでしょう?」

 雨好きの男は呆れた。

「私が好きなのは、菜種梅雨、桜流し、春霖(しゅんりん)だ。百穀を潤す百の雨、瑞雨(ずいう)甘雨(かんう)、立夏に向けて草木に恵みを与える穀雨だ。安易に一括りにしないでくれたまえ」

 そういうものかと、わたしは唸った。

 今日買って今日売り、利ザヤを掠め取る。
 一年以内に儲けを出して新しくチェロを買う。
 パッシブな投資家であり、三十年先の利益の為に投資する。

 わたしは誰?
 お金に求めるものは何?

 一時の快楽?
 将来の安心感?
 手っ取り早く名声が得たい?

 有名人がこの株に投資すれば最高だ! と広告しても、それが自分に適した投資か判断するのは、あくまでわたしだ。
 それとも雨を一括りに雨と呼んで、旱魃中の雨も都市のスーパーセルも同列に扱うわけ?

 流行っているからやるって……。
 毒殺が流行っていたら、毒殺するんだ。

 流行を追うのがわたしの仕事/趣味/使命だからほどほどに試す、それならわかる。

【参考文献】
 モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー ――一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社、2021)
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