4月22日 石ころ7:争いを好んで我が身を傷つける。知っている

文字数 503文字

 (いたち)(やすり)を舐めていた。

 舌が擦れて血が流れるのに、鉄を削り取っていると喜び、舐めるのを止めなかった。

 通りすがりの狐が言うには、

「舌がなくなるよ? 大事なものを失う前に、自らを省みたら?」
「まだ残っているから! あとちょっと、もうちょっと!」

 医者の兎が忠告するには、

「痛いでしょ? 自分の体の声に耳を傾けなくきゃ」
「耐えられるよ! あとちょっと、もうちょっと!」

 娘が訴えるには、

「お父様、帰ってきてください。母様ももう限界です。妹も寂しがってますし……」
「今日だけ今日だけ! あとちょっと、もうちょっと!」

 狐と兎と娘が集まり、打開策を協議した。

「鑢だ」

 三匹は炉に鑢を放り込み、すべて鉄に溶かした。

「いままで何をしていたんだ……?」

 鼬は舌を失わず、家族との信頼を取り戻し、新たな友情を獲得する。

 後日、鍛冶屋が再び鑢を作った。
 鼬が偶然立ち寄る。

「うっひょ~! 舐めろ舐めろ!」

 片時もゲームから離れたくなくて、おむつを履く十代の若者。
 久しぶりに少し……とゲームを起動した依存症の青年は、迎えが来るまで一週間を消し飛ばした。

 鼬か鑢か。
 依存症かゲームか。

 善も悪もない。
 あるのは、憐れみだけ。
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