4月28日 石ころ9:なびかせあい

文字数 579文字

 眠りの精オーレ・ルゲイエおじさんは、甘いミルクで子どもの目を潰し、子どもの(くび)に生温かい息を吹きかけ、手際よく子どもを寝かしつけます。

 自分の子どもではありません。
 他人の家に勝手に上がり込み、騒がれないよう子どもを眠らせるのです。

 夜中いっぱい、子どもに物語を語り聞かせます。

「窓際まで水が来ているよ。窓の外には立派な船がついている。さあ一緒に船に乗ろう。コウノトリを追いかけるんだ。みんなにちゃんとお別れを言うんだよ……?」

「風景画に入り込もう。ほら、雲が流れ出した。湖から川が流れているのがわかるかい? あの下流、森の陰には、たくさんのお城があるんだ。友達はみんなそこに住んでいる……楽園に移住しよう……」

「悪い子になったら、ボギーにさらわれちゃうよ? 国も教師も専門家も、君のことを考えてそう言っているんだ。僕の物語においでよ。誰一人傷つかない幸せの園さ……」

 耳を傾けてはだめ!
 親が子どもの耳を塞ぎます。

 おじさんはあなたを洗脳しようとしているの。盲目的に税金を支払う財布、無思考に命を散らす兵士、自分の物語を補強する材木、自分にとって都合の良い存在に仕立て上げるつもりよ。

 こっちにいらっしゃい。
 あなたは何も考えず、ただわたしの傍にいればいいの。

 わたしの物語は、誰一人傷つかない幸せの園よ?

 子どもは言いました。

「なんだ。みんな一緒じゃん」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み