5月2日 軽蔑の色1:人が変わるのはその人が変わりたがったから

文字数 592文字

「僕は悪くない、僕は悪くない。

 親がいけないんだ。育て方が悪かったんだ。
 年収一億円超の富豪の長男に生まれていたなら、こんなことにはならなった。幼少期から英才教育を軽くこなして、名門私立に通って女の子からちやほやされて、そのくらいのポテンシャルが僕にあるんだ。

 なのに誰も僕を生かせなかった!
 生まれた時点で不幸だったんだから、悪事に手を染めても構わないだろう?

 先天的な運不運の釣り合いを取ってるだけだ。
 しかも人を殺したとか、そんな大それたことじゃないし。

 僕は理解者にも恵まれないのか。
 本当の僕を知り、その才能を肯定し、護り育てるような……正しい親のような人。

 出逢いが足りなかったなぁ。
 結局、人生は運ってことか。はあ。

 僕が卑屈になったのも運。
 僕が自責思考できないのも運。
 僕が愛されないのも運、運、運……運が良かっただけの連中に、あれこれ言われたくないね。

 わかんない?
 そっかー。

 マジ、運ないわ。

 さっさとトラック、突っ込んできてくんないかな。
 異世界転生して、最強スキルでハーレムを築き上げる。

 世の平等を謳うなら、当然の配慮だよ。

 僕ほど可哀想な人間、この世にいないよね」

 警官は問うた。

「虐待死した赤子よりも?」

「赤子は無知なんだから、虐待されても『もっと愛されたかったバブゥゥ』って、僕より苦しむことなくない?」

 彼は嘆息した。

「あーあ、僕ってほんと不憫」
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