4月23日 信頼の色1:若芽は甘い

文字数 458文字

「月曜日、火曜日♪ 月曜日、火曜日~♪」

 妖精が歌を歌っていた。
 何回か聞いた後、男は続けて歌った。

「そして水曜日~♪」

 妖精は歌が良くなったと大喜びし、男のこぶを取ってくれた。

 男は身軽になり、以前より農作業が捗った。

「妖精なんているわけないじゃん」
「こぶを取ったら、血が噴き出て、失血死まっしぐらでしょ?」

 別のこぶ持ちの男がこの話を聞き、妖精の元に顔を出した。

「月曜日、火曜日♪ 月曜日、火曜日~♪」

 彼が濁声で叫ぶ。

「そして水曜日! もういっちょ木曜日!」
「下手くそ!」

 妖精は怒り狂い、前の男からとったこぶを男にくっつけた。
 男は二つのこぶの重さに耐えきれず、潰れて死んでしまった。

「安易に真似したり、下心で善意を振る舞うと、ろくな目に遭わない」
「潰れて死ぬのは自業自得だ。妖精は正しい」

 ……本当に?

 ファンタジーはファンタジーであるが故に、どんなおかしなことも無防備に信じてしまう。
 そして気づかぬうちに現実との境界を見失う。

 信頼して欲しい。
 物語は認識を惑わす危険な代物だ。

 今回はそういう物語だ。
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