4月27日 お金の本9:物語という牢獄

文字数 530文字

 ペストが流行った。

 家族は半分死んだ。
 友達は半分死んだ。
 同僚は半分死んだ。

 明日は私かもしれない。

「疫学学者証明済み! 効果てきめんの予防薬!」
「実験時に感染を89%抑制した防腐剤!」
「あの有名人が勧める強壮剤!」

 何があっても死にたくない。
 神に祈る以外、対処法はない。
 眉唾でも、もしかしたら、だって彼らのほうが詳しいし……。

 そうであって欲しいから。

 私は疑問の声を呑み込み、詐欺師に大金を払った。

 米国のアクティブ型の投資信託の85%が、インデックスファンドの運用利回りを下回る。
 2008~2018年の過去十年間、ずっとだ。

 来年はわからないから。
 投資の秘密を知っているから。
 僕は残り15%の選ばれた人間だから。

 そうであって欲しいから。

 私達は疑問の声を呑み込み、詐欺師に年間約5兆ドルを払った。

 私は私の物語の住民であり、その物語は現実とイコールで結ばれない。
 物語の外にも、意思は存在する。

 意思は操れない。
 運命は事実存在する。

 そのうえで何を選択するか、それだけが私の手の中にある。

【参考文献】
 モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー ――一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社、2021)
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