第41話

文字数 1,400文字

              41,
どの小班からも大した情報が持ち込まれず、愈々手詰まり感迫る中、村山班長は打開策を摸索した。ふと思いつき、県警本部の一課課長に電話を入れた。区検に、今回事件を毒薬事件だと通報してきた時の、応答などの詳細を確認したい、出来れば通報を受けた本人から直接に訊ければと依頼した。
 通報を受けた区検担当官から折り返し村山に電話があった、
「清水由美子死亡の3日後の午後3時頃、二十歳から三十歳位の、女の声で、名前を訊いても云いませんでしたが、何んとなく、電話口での息遣いが興奮したように荒いので、すぐテープを回して録音しておきましたので、今から、受話器の前で、そのテープ回します」
 ガチャガチャと器具をいじる音が聞こえ、そしてテープが古いのか、ザーザーと雑音混じりに女の声が聞こえてきた。

『先日、~町で、急死した清水由美子さんのことで、警察はちゃんと調べたんですか?何も調べもせず、ただの急性心不全として処理されたようですが、私は、毒殺されたのではないかと疑っています、はっきり云えませんが、何かの毒薬ではないかと思っています』
『清水由美子さんのご親戚の方、それともご友人とかの方でしょうか?』
『いいえ、全然、もし、友人とか親戚とかで無ければ、電話しては駄目、なんですか?』
『いえ、そうじゃない、ですけど。何故地元の警察に訴えないんですか?』
『ちゃんと調べもしない、はっきり云って無能の警察に何を今更訴えるんですか?』
『判りました、当方で、お聞きしましょう。ですが、いずれにしても、調査は地元の警察が行いますので、こちらでお話をお伺いし、私共で、それが再調査必要かどうか判断した上で、地元所轄署に再調査を命じます。必要とあれば県警本部からも応援を派遣します。
で、どうして、その清水由美子さんが毒殺された思われるのか、何か根拠、有るんでしょうか?それとも、何か決定的な証拠をお持ちとか、現場を目撃されたとか』
『そこまで云われると、ちょっと自信無いですけど、一番に、この清水由美子さんの周囲で変な事件が連続しているのに、何んか、聞けば、急性心不全だったとか、ただのスピード出し過ぎの交通事故だったとかで処理されているようですけど』
『ただの急性心不全とか、ただの交通事故だとか、仰るそれぞれ、出来れば具体的に、誰が、何処で、とか教えて頂ければ、当方としても具体的にそれぞれについて迅速に再調査することが出来るのですが…』
『…その辺りの事、死んだ清水由美子さんの周囲、調べて貰えれば判ると思います、それに、この清水由美子さんのご主人の、上村定信さんが急死したことまで遡って調べて貰えれば、色々と出て来る思いますが』
『色々とお詳しい、ようですが、何故、急性心不全が死因であることが疑問に思われるんですか?』
『…毎日、普通に元気に生きてるひとが、その時になって、急に、泡吹いて死んだりしますか?それも二人も…』
『二人も、とは、誰の事、ですか?…』
『…清水由美子さんとご主人の上村定信さん…あんまり喋り過ぎると、そちらで録音してるでしょうから、今日は、この辺でやめときます』
電話が切れる音、そして雑音だけが未練がましく聞こえてくる。
「このテープ、複製して村山さんに送りますが、どうです、この通報から何か、感じられますか?」
「かなり身近に居た人物のように思えますね。いや、ありがとうございました」
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