第40話 カセットテープB面【6】

文字数 708文字

【6】

『木更津基地では私が帰還する半年ほど前に、南方戦線で戦力減となった二つの航空隊を合併し、一隊をベテラン主体の主力部隊、もう一隊を練成員主体の予備部隊とする二つの攻撃飛行隊に再編して戦力回復に努めていたのです。
 まあ、簡単にいえば一軍と二軍というところですな。
 それで私は二軍の練成員主体の攻撃飛行隊の配属となったのです。
 練成員とは、つまりまだ練成が必要な新兵ということですがね、これまで索敵任務と練成飛行だけに明け暮れていたその練成員主体の攻撃飛行隊も、十一月下旬に迫るサイパン攻撃作戦に参加することになり、長い渡洋爆撃となるため新兵の偵察では心もとないということで、偵察員だけは古参の私が搭乗して機長を務めることになったのです。
 一式陸攻を主力機材とした攻撃飛行隊は、攻撃の頭文字を取ってK飛行隊と呼ばれておりましてね、七〇一から七一一までの部隊があったのです。
 今話した主力部隊は、K七〇一飛行隊と言いました。私が所属した練成部隊は……、これは関係者もまだ存命なので、ここでは言わんでおきましょう……、まあ、とにかくK七〇なんとか飛行隊です。
 そのとき、ペア達から聞いたんですがね、私が木更津に来る二週間ほど前に台湾沖での航空戦がありましてね、K七〇三やK七〇八という精鋭飛行隊が参加して、半数近くが未帰還になったそうでしてね、そんな訳で練成員主体の予備部隊も重要作戦に参加せざるを得なくなったのです。
 私は、練成員だけの部隊と聞いて正直うんざりしていたのですが、攻撃先がサイパン、しかも目標がB-29と聞いて、「八ヶ月の恨み! サイパンやトラックのをとってやる!」と俄然やる気が沸いてきましてねぇ……。
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