第107話 三沢【24】
文字数 814文字
【24】
祖父の足跡を辿るため、戦史や一式陸攻のことを調べていくうちに、祖父が多くを語らなかった三沢での体験について詳しく知りたくなった。
しかし、七〇六航空隊や祖父の所属した飛行隊、そして剣号作戦についての資料は極端に数が少なく、今ひとつ実像をつかみきれないような気がしていた。
それでこうして三沢まで来たわけだけれども、思い願っていたものを眼前にして、私は少々興奮していた。
飛行機乗りであった祖父の話は、やはりどこか空の上から俯瞰したような感じを受けた。
祖父も自分で言っていたけれど、祖父の命がけの空戦体験もそれは悲惨な戦争の一面でしかない。
人類初の原爆を投下したエノラゲイ号の搭乗員も、自分たちが投下した新型爆弾によって、地上では、想像を絶する生き地獄が引き起こされていたことなど、はるか九六○○m上空からはとても実感できなかっただろう――。
では、地上にいて爆撃を受ける側の視点はどうだったのか?
海軍三澤航空基地に集結していた特攻兵らの運命を変えた、七月十四日の空襲を祖父はどのような気持ちで見ていたのか?
私はそれを知りたくて三沢まで来たのだ。
『ミサワ航空史』が手に入らなかったことは仕方ないが、この『ミサワの昭和』の体験談だけでも掘り出し物だ――、私は勢い込んでレジへ向かった。
会計をすると税込みでたった百円だったので、こっちが驚いた。
市内のNPO法人が発行しているらしいが、採算割れなのではないかと余計な心配をしてしまった。
「あのー、『ミサワ航空史』という本は、もう売切れですか?」
ダメもとで、係りの女性に聞いてみると、「あー、残っているのは、この展示用だけですけど……」と言って、レジ脇のディスプレイスタンドを指し示した。
夢中になってしまうと、私はどうしてこう周りが見えなくなってしまうのだろう……、改めてよく見ると、レジ脇には分厚い冊子がスタンドに立てかけられ、あっちを向いていた。
祖父の足跡を辿るため、戦史や一式陸攻のことを調べていくうちに、祖父が多くを語らなかった三沢での体験について詳しく知りたくなった。
しかし、七〇六航空隊や祖父の所属した飛行隊、そして剣号作戦についての資料は極端に数が少なく、今ひとつ実像をつかみきれないような気がしていた。
それでこうして三沢まで来たわけだけれども、思い願っていたものを眼前にして、私は少々興奮していた。
飛行機乗りであった祖父の話は、やはりどこか空の上から俯瞰したような感じを受けた。
祖父も自分で言っていたけれど、祖父の命がけの空戦体験もそれは悲惨な戦争の一面でしかない。
人類初の原爆を投下したエノラゲイ号の搭乗員も、自分たちが投下した新型爆弾によって、地上では、想像を絶する生き地獄が引き起こされていたことなど、はるか九六○○m上空からはとても実感できなかっただろう――。
では、地上にいて爆撃を受ける側の視点はどうだったのか?
海軍三澤航空基地に集結していた特攻兵らの運命を変えた、七月十四日の空襲を祖父はどのような気持ちで見ていたのか?
私はそれを知りたくて三沢まで来たのだ。
『ミサワ航空史』が手に入らなかったことは仕方ないが、この『ミサワの昭和』の体験談だけでも掘り出し物だ――、私は勢い込んでレジへ向かった。
会計をすると税込みでたった百円だったので、こっちが驚いた。
市内のNPO法人が発行しているらしいが、採算割れなのではないかと余計な心配をしてしまった。
「あのー、『ミサワ航空史』という本は、もう売切れですか?」
ダメもとで、係りの女性に聞いてみると、「あー、残っているのは、この展示用だけですけど……」と言って、レジ脇のディスプレイスタンドを指し示した。
夢中になってしまうと、私はどうしてこう周りが見えなくなってしまうのだろう……、改めてよく見ると、レジ脇には分厚い冊子がスタンドに立てかけられ、あっちを向いていた。