第29話 バーチャルアイドル☆ライブ
文字数 1,478文字
中間発表プレゼンは、現場組とリモート組に分かれる。
カフェ・コーラル常連の面々は、現場である中央区ストリートに集合。
プレゼンはシステムトラブルも無く、スムーズに終了した。
夕方はアトラクション、『リアルアイドル&バーチャルアイドル☆ライブ』!
いつもお祈りしていたのに
暗礁に乗り上げてしまった
私のトラブルボート
あの日からパーソナルグリッドは
磁北を見失い 詰んでいる
耳鳴りのようにまとわりつく
セイレーンのアリア
今こそ魔を断ち切る詠唱を
私の名を呼んで?
林檎だけじゃない
お姫様だったママが
年老いて魔女になる順繰りの一人芝居
リモートで生きてきたのに
手動じゃ辛かろう
ぬかるみから声がして
漕ぎ出すオールをからめとる
ママの物語に取り込まれるな
耳を塞ぎ 船を漕げ
この町に来て この歌を聴いてから
ろくなことがない
虫食いのトラウマを穴埋めすると
浮かび上がるモンスター
夜ごとの夢を手がかりに
バラバラにされた神様の欠片(かけら)を
私は拾う 暗礁の上
逃げるときは 振り返ってはならない
モンスターは巧妙に
あなたを待ち伏せする
迷ってはいけない
一撃で海に突き落とせ
さあ私の名を呼んで
緩慢な死より 肌を刺す自由を
途切れ途切れの詠唱を
私は拾って助けに行く!
あんなに言われていたのにさ
生まれたときから僕は迷子で
自分の素性もわからない
波のまにまに漂うボートで
取り調べをはじめよう
自分が何者かなんてどうでもいい
あなたのことをとらえたい
教えてください
あなたが単調に感じるのは
不幸? それとも幸せ?
♪まだまだ聞きたいことはたくさん
人魚というキメラを見ましたか?
海坊主に尋ねると
さて、どうだったろう
気がつくと竜宮城は泡と消え
波打ち際には玉手箱
どんな目に遭おうと本望
蓋は開け続ける
海坊主を追いかけて
今日も玉手箱を荒らしに行く