第38話 宮さまに振り回されちゃう

文字数 1,015文字

 玲良は、自宅から本社事務所の最上階スイートルームへメイドとして通う毎日が始まった。


自宅と仕事場は自転車で10分程度の距離。


最初は素っ気なかった宮さまから、次第に夜や土日祝日の休みにも呼び出されるようになった玲良。

新田さん、頭痛がするんだ。

今から珈琲淹れに来て。あんまり薬ばかり飲みたくないから。


休日出勤手当出すよ。

お継母からのアドバイス
宮さまは本体も影武者も頭痛・肩こり持ち。特に台風、雨の降る前に注意よ。


え?影武者を知っているのは、宮プロ古参オタの私たちぐらいよ。私たちは口が堅いけどね。


あ、頭痛の件だったわね、そういう時はね……

カフェインの取り過ぎはいけませんよ。

頭痛に効くツボを押しますから、楽な服装でベッドに仰向けになってください。


え?脱がせて?……宮さまは甘えん坊さんですね。

……あ、宮さま、寝息をたてていらっしゃる。お疲れなのね。
またある日、在宅勤務をされている宮さまから、
新田さん、最近眠れないんだ。なにか温かい飲み物が飲みたい。

勤務時間過ぎているけど、残業手当出すから残って。


え?そう、残業命令だよ。

継母アドバイス
宮さまは、大事な仕事の前に不眠症気味になりがち。


そういう時に「ばあや」がやっていたのが……

はい、シナモン入りのホットミルクです。蜂蜜は入れますか?
うん、入れて。
ホットミルクを飲み干し、ジッと玲良を見つめる宮さま。
新田さん、俺が寝るまで添い寝して。


深夜手当を加算するから。

め、命令ですか?
ああ、命令だ。


隣のクローゼットの籠の中に、ルームウエアが入っているはずだ。

早く準備して。

 玲良は別室のクローゼットを開け、戸惑いながらアイボリーのオーガニックコットン素材のルームウエアに着替える。
(ルームウエアというより、薄手のネグリジェみたい……恥ずかしいし、どうしよう)


(でも雇い主の命令だから……)

 玲良はドキドキしながら、大きなベッドに腰をかけ、宮さまの背中側から、怖ず怖ずとガーゼ仕立てのタオルケットに潜り込む。


すると宮さまが、クルッと向きを変え、玲良の胸元に顔をうずめたのだ。

継母アドバイス
何度も言うけど、宮さまは幼い頃、優しかった母を亡くしている。

だから一見スカして見えるけど、マザコンっつーか、優しい女性に甘えたい願望があるって、出待ち仲間が言ってた。


いいこと?玲良、やることはわかっているわね?

……ふぅ……落ち着く。
(私は落ち着かない!!!)


(でも宮さまから命令されるの……なんか……いい……)

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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