第39話 『量産型セクサロイド・ラズベリー』を脳内展開

文字数 1,245文字

宮さまは、玲良の胸に顔をうずめながら……
新田さん、もうここに住み込みなよ。奥の部屋、好きに使っていいからさ。
【ナレーション】


玲良は、推しジャンル『量産型セクサロイド・ラズベリー』のヒロイン、ラズベリーと自分自身をシンクロさせ、高まりだしていた。

(私はセクサロイド・ラズベリー)


(家事のほか、性的処理も行う意図で作られたメイド型アンドロイド)


(本来感情や感覚を持たない量産型セクサロイドなのに、魂と快感が芽生えてしまうバグが生じてしまった私)


(それが知られたら廃棄されてしまうの)


(だからダメ、感じたらダメなのに)

あれ?新田さん、動悸がすごいけど、大丈夫?
大丈夫じゃ……ない。
え!?顔赤いよ、熱があるのかな?

(おでこに手を当てる)

(宮さま、いいからもっと冷たくしてください。その方が萌えるので)
『量産型セクサロイド・ラズベリー』

通称『ラズロイド』の世界観

近未来。女性の出生率大幅ダウン、生涯独身男性の急増した世界。

政府は精子採集のためのセクサロイドを開発。

採取した精子は、段階的にふるいにかけられ、オール体外受精で出生、養育まで管理される。


本来、感情と性感帯及び快楽を感じる機能を持たない量産型セクサロイドの中で、バグにより余分な機能を得てしまったラズベリー。

政府の外郭団体「セクサロイド保全管理協会」の包囲網と、レア・セクサロイド収集マニアたちから追われる日々。


植物園に隠れていたラズベリーを見つけ、かくまってくれたのは、若い生物資源学類助手、ハギだった。

今宵も簡易ベッドの上で、ラズベリーを”開発”する実験が行われる……。

カーテンコールの後。
(セクサロイドという概念は少し驚いたけど、それはまあ、どうでもいい)


(自分が作ったAIが、プログラムにない機能を持ったら……。例えば人格、……それが魂が入るということだろうか)


(優れた仏師は仏像に魂を入れるというし)


(私の創作物が、別個の人格を持って、自分の意見を持ったら……想像しただけで興奮する……!)

(『シンデレラの匙加減』の原作ってこんなだったの?知らなかったわ)


(教育上悪いわ、どうしましょう、波瑠さんにはまだ早かったみたい)


(波瑠さんがこれをきっかけに、おかしな性癖に目覚めてしまったら、私の責任だわ)


(ほら、波瑠さん途中からぼーっと妄想しているみたいだし~)

波瑠が制作したチャットボット『ナラティブ・リーディング・メロディ』。


メロディに意志が備わるのは、この日から3年後のことであった。

作者です。


番外編、作中作が過ぎるだろ、いい加減にしろと、みなさん呆れかえっていませんか?

本編は珍しくプロットを作ったのですが、番外編は思いつきで好き勝手やってしまいました。

それにしても全編通じて母親が亡くなりすぎですね、実際にも象徴的にも。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

少しでもみなさまの暇つぶしになれば、本望というか、こんなに嬉しいことはありません。


みなさまの航海が無事であることを心から祈っております。

それでは、また。

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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