第22話 サンプル採集
文字数 1,012文字
如月さん、８月末は会長杯の中間発表だよね。
チャットボット、進んでいる？
ちょうどいい、篠田君、メロディの話相手になってください。
サンプルは多い方がいい。たとえそれがサイコパスであっても。
細野君は単純で深みが無いので、あまり学習サンプルに向きません。
おい、悪口だぞ！
サイコパスだなんて、失礼しちゃうな～
ところで、チャットボットにメロディなんて名前つけたの？
幼児向け玩具みたい。
あ、幼児向けだなんて、そんな！
メロディちゃんはすごいの、えっとね、お話しすることでその人の持つ物語を読むっていうか……そしてその物語から歌も作れるの、上手なの。
（メロディを誉めてもらって満足気）
正式名称は『ナラティブ・リーディング・メロディ』
メロディを呼び出す如月。
こんにちは！
へえ……これね。
かわいいでしょ？
俺、こういうのカワイイとかよくわかんないけど、深層心理を読むんでしょ？
ちょっと身構えちゃうな（笑）
あ……実は私もちょっと怖い。
メロディと対話することで、バイアスやダブルバインドなどを除去できて、生きやすくなるようプログラミングしたはず。
警戒しないでもらいたい。
神崎と篠田を交互に見て、さびしそうな表情を浮かべるメロディ。
…………
あ、違う、違うよ！
メロディちゃんのことが苦手とか嫌いとかじゃないよ。
さすが如月、これ、よくできているな、いい反応。
あ、篠田君、メロディちゃんのことを”これ”だなんて！
ハハッ、ごめんごめん。
俺でよければ学習サンプルになるよ。対話すればいいんだね。
みんなの前では恥ずかしいから、奥のブースを使わせてもらうよ。
約２０分後
簡単に自己紹介とかしてきたよ。
メロディ、篠田君とお喋りしてちょっと疲れたかも。
（細野とコソコソ話）
メロディを疲れさせるなんて、さすがサイコパス。（笑）
だな。篠田はあんまり喋らなければいいヤツなんだけどな～。
でも黙っていると、それはそれでとんでもないこと考えていそうで怖いんだよな～。
美羽ちゃんとはたくさんお喋りしてお友達になったから、今度は茉白ちゃんとお喋りしてお友達になりたいな。
川本は今まで散々メロディに愚痴っていたから、まったく新鮮味ないもんな。
愚痴の内容までは知らないけど。
端から見ていると、メロディがスナックのママで、おまえが酔ってグダまいている客みたかったぞ。
うるさいな～単純男のくせに～
あ、じゃあ、ちょっとだけならいいよ。
ちょっとだけのお喋りなら。
奥のブースへ消える、神崎とメロディ。
