第10話 不登校の消滅

文字数 756文字

神崎はほぼ毎日カフェ・コーラルに通い、自習をするようになった。


一定の間隔をおいて座る川本や如月が、プログラミングや課題、読書をしたり、ウトウトしたり。

茉白ちゃん、毎日偉いわね。

でもあんまり根を詰めないで息抜きしてね。

あ、はい、ありがとうございます。


実は私、体が弱くて学校を休みがちだったので、勉強が遅れているんです。

ここは頭のいい子が多いって聞いたので、授業についていけないと大変だから……

そうはいってもあの子たち、オールマイティーって訳でもないみたいよ。
私、文系科目苦手。如月さんは体育が壊滅的らしい。


ね、神崎さんはどこの高校に転入するの?

常世東高校なの。普通科。
私も常世東高だよ!

普通科は3クラスしかないから、同じクラスになるといいね。

うん!同じクラスだったらいいなぁ。
ま、私はほとんど通学していないんだけどね。
え?どうして?
ここの中学高校はね、新型ウイルスがきっかけで在宅でオンライン授業か、webサービス授業利用か、従来通りの登校か、フレキシブルに選べるようになったの。

私の場合、普段在宅で体育だけ登校している。体がなまっちゃうから。


だから常世町では「不登校」の生徒は存在しないよ。

どうして川本さんは登校しないの?
私、本当は細野パイセンや如月さんの通う真砂高校に行きたかったんだけど……受験失敗しちゃってさ。

大学は絶対、真砂大学に行きたい。

だからクラスのみんなと足並み揃えて授業なんて受けていられない、自主学習webサービス使ってどんどん進まないと。


筆記試験で合格するか、真砂会長杯やコンテストで受賞歴作って、AO入試にチャレンジするか……

そうなの……

でも私、1人で学校行くの心細いな……

(あ、すごくまばたきしている。心配なのかな)


じゃあ、最初だけ一緒に行く?

うん、お願い、約束ね!
(……なんか可愛いな)
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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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