第36話 オーディション当日

文字数 1,199文字

 宮プロビル内、「宮さま専属メイド・オーディション」会場に到着した玲良。

キョロキョロしている。

テーブルの中央に座っている、あの方が宮さまかしら?

とても聡明そうな方。

(周囲の人と談笑している)

それにしても綺麗な人が多いなあ。特にあの人。

今日こそは絶対に合格してみせる。

とにかく宮プロに就職!話はそこからよ。

わ、男の子もいる。執事?ボーイさんかしら?

ああ、宮さま、生で見ると更に凜々しく慈愛に満ちている、まぶしい、かっこいい、素敵すぎる……宮さまが手にされている紙コップ、どうにか入手したい……!

まずは料理審査から行います。

ここにある食材を使って、自由に調理してください。制限時間は1時間です。

うわぁ、初めて見るような高級食材ばっかり!どれにしようかな。


あ……でもお継母さん、こう言っていたっけ。

いいこと?玲良。

宮さまはね、幼い頃母を亡くして、ばあやに育てられたの。

そのばあやの豚汁が宮さまの好物なのよ。意外と庶民的なの。

レシピはこれ。手際も審査されるからね。


え?月野クン出待ち仲間からの確かな情報なのよ!

みんなフレンチや中華のフルコース作っているよ~大丈夫なの~?

でもまあ、失敗してもオーディションに落ちるだけだし、ま、いいか。

玲良は豚バラ肉、大根、人参、ゴボウ、ネギをバランス良く取り入れ、ササッと豚汁を作った。
お継母さん情報では、宮さまのお好みは生姜の千切りを入れるのと、仕上げに胡麻油をほんの少し、そして小口ネギを山盛り。
 審査員たち4名が周囲を歩き回る。末尾に作業着の青年が、タブレットを手にして審査員のコメントをメモしているよう。

すでに作り終えた玲良は、それらを椅子に座ってぼんやり眺めていた。

今日、忙しくて朝からろくに食べていないんですよ。

ちょっとだけ試食させてもらえませんか?


あ、やっぱりダメですか、ハハッ。

あの方バイトかしら?ちょっぴり宮さまに似ているみたい。
作業着の青年は、最後に玲良の作業台へとやって来た。
あ、いい匂い!お腹空いたなぁ。
お仕事大変ですね、もしよろしければどうぞ、たくさん作ったので。
ありがとう。お願いします。
小口ネギはお好きですか?
はい、もちろん。
作業着の青年は玲良の隣に座り、手を合わせて、
いただきます……あ、懐かしい味。(ボソッ)
青年はそう言って残さずきれいに食べ、「ごちそうさま」と小声で玲良にお礼を言った。
お口に合ったようで、よかったです。
それでは、オーディションを終了いたします。

結果は合格した本人へ通知いたします。


みなさま、本日はありがとうございました。

え?ちょっと待ってよ、これで終わり!?宮さま、召し上がっていないじゃない。

嘘でしょ、もっとアピールさせてよ!

白水着も持ってきたのに~!

(今日は料理しながら、宮さまの動画を隠し撮りできたから、まあ、ヨシとしよう)
帰りに受付で呼び止められる玲良。
新田さま、お待ちしておりました、どうぞこちらへ。
???
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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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