第21話 お詫びに『ブッダ・チャットボット』

文字数 1,111文字

花火大会の次の日、カフェ・コーラルに集まる面々。

篠田も最近、カフェ・コーラルに顔を出すようになった。

昨日はお疲れさま。

早めに帰ってよかったね。あのあと混雑したみたい。

あ、篠田君、花火すごかったね。

迫力あったなぁ~。

花火もよかったけど、俺はホットサンドがよかったな。


全部美味しかったけど、特にハムとチーズ、ツナと玉ねぎ……うーん、手作り林檎ジャムとシナモンも外せないな。もちろんパセリ入り卵のタルタルソースもね。

結局全部だ。(笑)

お祖母ちゃんに言っておくね。

如月がカフェに入ってくる。


真っ先にいつもの桃ジュースを取りに行き、ちびちび飲みながら神崎に近づいてくる。

茉白ちゃん、昨日のエラーの原因が結局わからなかった。

ごめんなさい。

え?そんなこと、気にしないで。
川本と細野はまたコソコソ話し。
さすが如月、頭はいいのに、ズレズレなんだよな。
エラーメッセージが正しい可能性があるのにね。


ちょっと闇を感じるから、私は掘り下げないけど。

うん。それは言える。

俺もそれに踏み込む勇気は無いな。

茉白ちゃん、お詫びに今度、『ブッダ・チャットボット』っていうの作ろうと思う。


簡単な質疑応答をすると、自分と先祖に最適な仏が現れて、救済してくれるんだ。

昨日思いついた。

???
「最適な仏」ということは、仏さまって複数いるの?
たしか、仏さまにもランキングがあるよね。


トップの如来グループと、それに継ぐ菩薩グループと。

中間管理職みたいなイメージ?

そうです。

すでに悟りを開いた「如来グループ」は、釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、毘盧遮那如来、大日如来さまたち。


悟りに至る少し手前にいるのが「菩薩グループ」

観音菩薩、弥勒菩薩、地蔵菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩さまたち。

こちらは慈悲をもって人々を救済する。


次に力ずくで人々を悟りに導くのが「明王グループ」

不動明王、愛染明王、孔雀明王さまたち。

早口で喋り、止まらなくなる如月。
オーダーメイドの最適な念仏を唱えてくれたら素敵だと思わない?


その詠唱の音波は、高ぶった脳波を緩和させる周波数(ヘルツ)にチューニングして、それは故人、遺族どちらにも届くように、次元を越えて響かせることができたら。

集合無意識に響く音って、わりと木魚のリズムが近いんじゃないだろうか、どう思う?

うっ。波瑠ちゃんの話に、ついて行けない……
あ~あ、なに言ったんだか。

(ため息)

細野さん、ほんと私、頭悪くて理解できなくて恥ずかしいです。
ち、違うよ、違うってば!

誤解しないでよ、神崎さんのことを言ったんじゃないよ!(焦り)


如月のことを呆れてため息ついたの!

神崎さんの反応は正しいって。

俺も如月にはついて行けないもん。

細野パイセン、焦ってる~。

(ニヤニヤ)

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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