第2話 カフェ・コーラル

文字数 826文字

駅の前の木陰のベンチでは、小型犬を連れた2人の老人が並んでプラカードを持っていた。
核ゴミを神聖な翡翠ノ丘へ持ち込むな!
本当に安全性は確保されているのか!?
それを通り越した先に、常世町役場の看板はあった。

その手前が正面硝子張りになっており、見ると「カフェ・コーラル(珊瑚)」の看板。


その隣の7階建ての大きな建物は図書館。その奥に生涯学習センター。

周囲をセンスのいい街路樹が彩る。


少女はカフェの入口、自動ドアに手をかざす。

都心のお洒落なオフィスみたい。あちこちにあるミストシャワーが涼しい!
少女はおそるおそる中に入る。


中はカフェというより、広々としたコワーキングスペース。

大企業のオフィスに紛れ込んだみたい。


老若男女が思い思いに本を読んだり、パソコンを開いたりしている。

天井にはシーリングファン。空調が気持ちいい。



註:コワーキングスペースとは……事業者や起業家、在宅勤務の会社員などが、机、椅子、ネットワーク設備等の実務環境を共有しながら仕事を行う場所。

(どこに座ったらいいんだろう)


(大きな長テーブルが2つと、右にブースが5つ。飲み物はどこ?どういうシステム?)

カウンターに居たスタッフが、オドオドして目をパチパチさせている少女に気がつく。


こんにちは!

(こっちこっちと、手招き)

こんにちは。

(カウンターの前に立つ)

飲み物はこっち、奥よ。

セルフサービスなの。

緊張しながら飲み物を取りに行く少女。
あ、あの、お支払いは?
あら、そんなの無料よ、もしかしてこの町初めて?
はい、今日からここに引っ越して来ました。
あなた1人で来たの?
はい。東地区に住んでいる祖父母と同居することになって。


(林檎ジュースを一口)

あ、美味しい!!

でしょう! 

ゆっくりしていってね、ここはフリースペースでみんな自由に使っていいの。


ほら、ここで勉強している子もたくさんいるのよ。

(カウンターで頭を抱えている少女を指さす)

あ~~~プログラムが動かない、暗礁に乗り上げた~~


どこでつまずいたんだ~

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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