第13話 川本の研究動機
文字数 1,251文字
私、中学のときの模試で、真砂高校はずっと合格圏内だったんだ。
なのに受験の日、真砂高校へ向かう地下鉄で、
…………痴漢に、あったんだ。
動揺しちゃってさ、
試験時間には間に合ったんだけど、答案ボロボロで、
あいつ……受験に向かう女の子を狙っていたんだ。
受験生なら騒いだりせず、泣き寝入りするだろうって……
試験に間に合わなくなったら、大変じゃん……
そう、卑劣で卑怯、よそから来た多分常習犯。
「デジタル関所」ができる前だったから……
川本さん、だからもっと徹底した駅の防犯システムを作ろうとしているの?
川本さん、メロディとよくお話ししてくれているけど、少しはプラスになっているのだろうか。
プラスになっているよ!
メロディから最初、「暗礁に乗り上げてしまっているみたいね」って言われたんだ。
確かにあの日つまずいて、ケチがついたようになって、立ち往生している心持ちだったから。
そんな目にあったのが悔しいし、そんなことで動揺する自分も悔しくて。
私……メロディに、「こんなことはたいしたことじゃない、もっと酷い目にあっている子はいるし」「こんな目にあうのは私に隙があったのかな?」って聞いたんだ。
そしたら、
美羽ちゃん!美羽ちゃんは大変な目にあったのよ。私の前では我慢なんてしないで。もっと怒っていいの。
私の個人的な意見だけど、犯人は許さなくていい。
あのね、性被害に遭った子が、「こんなことはたいしたことじゃない」「こんなことはよくあることだ」と思い込むために、援助交際をするようになるケースがあるのよ。
心に残った傷を、体を傷つけることで誤魔化して意識を反らそうとする、一種の自傷行為かもしれない。
美羽ちゃん、心にフタをしないで?
それにこんな目に遭うのは、美羽ちゃん側に隙があるだなんて、そんなこと絶対にない!
そんなことを思ってはダメよ!!
うん。
それにね、「この出来事は美羽ちゃんの価値を貶めるものではない」と何度も言ってくれた。
メロディのおかげで、少し楽になったんだ。
ね、私のことは、「川本さん」じゃなくて「美羽」って呼んで?
慣れるまでは美羽ちゃんって呼ぶね。
私のことも茉白でいいよ。
みんなお願い。波瑠ちゃんのことも名前で呼んであげて?
私は如月さんのスペックの高さを知っているから、波瑠さん、からだな。
あら?楽しそうな音楽が聞こえる……なにかイベントが始まるの?
ふれあい広場で、「真砂大学ラボ対抗のど自慢大会」が始まるみたい。
飛び入り大歓迎だって。
メロディが音楽に興味を持っている。
聞かせてあげてもいい?
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