第4話 真砂会長のお孫さま

文字数 757文字

…………

(鞄をドサッと椅子に置く)

現れた神経質そうな男子は、ムスッとしたままカウンターに座る。
細野君、こんにちは!


いつも言っているけど、まずは挨拶でしょ!

(小声)お坊ちゃま、また叱られた~
こんちは。


……俺がお坊ちゃま?

真砂会長のお孫さんですから、お坊ちゃまでしょう。
お坊ちゃま、「じっちゃんの名にかけて!」って言ってよ。

クスクス

川本、俺は先輩だ、タメ口やめろ。
細野パイセン、高2でしょ。

1歳差なんて誤差じゃん。

アッサムさん、俺、会長の三男の、愛人の次男ですよ。


それでもお坊ちゃまですか?

もちろん!

一応、会長の血が流れていますから、私ども下々とは違います。

一応?

アッサムさん、わかっていると思いますが、真砂グループは血縁関係ガン無視の実力至上主義ですよ。

俺に敷かれたレールはありませんよ。

ドンマイ、お坊ちゃま!
川本、てめえ。

会長に一目置いてもらうためには、今度の『真砂会長杯コンテスト』で存在感を示さないと。


なのにアドバイザーのアッサムさんは、アイツの手伝いばっかりして……

終始機嫌の悪そうな高校生男子は、長テーブルの端っこでPCのキーボードを叩いている少女を、親指で指す。


それを見て、仲川さんは苦笑しながらその少女に声をかける。

波瑠ちゃん、そろそろ休憩して水分補給しなさい。
あ、はい。
波瑠ちゃんと呼ばれた少女は、ノロノロと立ち上がり、飲み物を取りに行く。
波瑠ちゃん、この子、同級生よ。
(桃ジュースをチビチビ飲みながら)

如月波瑠です……

(えっと、きさらぎ はるちゃん)

神崎茉白です。

今日からここに引っ越して来ま

挨拶が終わらないうちに、ストレートボブの少女は前のめり。
おお、転入生ですか!!


さっそくですが、神崎さん、私の試作チャットボットに話しかけてもらえませんか。

転入者に対する反応を見たいのです。

(茉白の隣に座る)

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登場人物紹介

神崎 茉白(かんざき ましろ)


高校1年生。常世町東地区に住む祖父母と同居するため、夏休みに常世町に転入。


川本 美羽(かわもと みう)


常世東高校1年生。東地区に住んでいる。

如月 波瑠(きさらぎ はる)


真砂高校1年生。真砂グループ会長、真砂孝氏の三男、真砂裕氏の愛人の子。

母は医者。新型ウイルス治療中に感染により命を落とす。

その後、子どものいない真砂裕夫妻に引き取られ養子縁組した。便宜上、旧姓を使用している。

細野 晋(ほその しん)


真砂高校2年生。如月同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は裕氏の元秘書。中央地区に住んでいる。

篠田 柊也(しのだ しゅうや)


真砂高校2年生。如月、細野同様、真砂会長三男、裕氏の愛人の子。

母は真砂裕氏の元ハウスキーパー。中央地区に住んでいる。

仲川 史織(なかがわ しおり)


常世町役場併設のコワーキングスペース、「カフェ・コーラル(珊瑚)」勤務。

アッサム


インドから真砂大学に留学していた。そのまま真砂グループに就職。上席研究員。

神崎 苑子(かんざき そのこ)


茉白の祖母。元病院勤務(栄養士)

神崎 直哉(かんざき なおや)


茉白の祖父。元常世町役場勤務。

田端 薫(たばた かおる)


常世町役場2階、全国原子力保全整備機構(NMJ)勤務。3年前常世支部に赴任した。

ナラティブ・リーディング・メロディ


如月波瑠制作のチャットボット


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